蓄電池とは、電気を化学エネルギーとして貯めておき、必要なときに電気に戻す装置です。
太陽光発電や風力発電などの再生可能エネルギーと組み合わせることで、自家消費や売電、災害時のバックアップなどに活用できます。
しかし、蓄電池は高価なものであり、その価格は様々な要因によって変動します。
この記事では、蓄電池の価格推移の背景と今後の展望ついて解説します。
1.蓄電池の価格推移の背景と要因
①蓄電池の需要と供給の変化
蓄電池の価格は、需要と供給のバランスによって大きく影響されます。需要が高ければ価格が上がり、供給が多ければ価格が下がります。
では、過去から現在にかけて、蓄電池の需要と供給はどのように変化してきたのでしょうか。
需要の増加
蓄電池の需要は、以下のような要因によって増加しています。
- 太陽光発電の普及:太陽光発電は、再生可能エネルギーとして環境にやさしく、自家発電ができるというメリットがあります。しかし、太陽光発電は天候や時間帯によって発電量が変動します。そのため、余剰電力を売電するか、蓄電池に貯めておくかという選択肢があります。売電する場合は、FIT(固定価格買取制度)という制度を利用できますが、FIT期間は10年から20年であり、その後は売電価格が大幅に下がります。そのため、FIT期間満了後やピーク時などに自家消費するために蓄電池を導入する家庭が増えています。
- 災害対策:日本は地震や台風などの自然災害が多い国です。災害時には停電や断水などの被害が発生する可能性があります。そのため、非常時にも安心して生活できるように蓄電池を導入する家庭が増えています。蓄電池は、バックアップ機能を備えており、停電時にも自動的に切り替わって電気を供給できます。また、蓄電池とEV車を連携させることで、EV車のバッテリーを非常用電源として利用できるサービスも登場しています。
以上のように、蓄電池の需要は高まっていますが、それに対応して供給も増えています。
供給の増加
蓄電池の供給は、以下のような要因によって増加しています。
- 技術革新:蓄電池の技術は日々進化しており、性能や品質が向上しています。特に、蓄電池に使用されるリチウムイオン電池の技術は、EV車やスマートフォンなどの分野でも応用されており、高効率・高容量・長寿命などの特徴を持っています。また、リチウムイオン電池以外にも、鉛蓄電池やNAS(ナトリウム・硫黄)蓄電池などの新しい技術も開発されています。
- 量産効果:蓄電池の需要が増えるとともに、生産量も増えています。生産量が増えると、材料費や製造費などのコストが削減される量産効果が発生します。量産効果によって、蓄電池の価格は下がります。
- 競争激化:蓄電池の市場は、国内外の多くのメーカーや業者が参入しており、競争が激化しています。競争が激化すると、価格やサービスなどで優位性を示そうとするため、消費者にとってはメリットがあります。
②蓄電池のコスト構成と低減要素
蓄電池の価格は、大きく分けて以下の3つの要素から構成されます。
蓄電池本体
蓄電池本体は、蓄電池の種類や容量、性能によって価格が異なります。
一般的には、リチウムイオン電池が主流であり、容量が大きく性能が高いほど価格が高くなります。
蓄電池本体のコスト低減要素は、主に以下のようなものです。
- 材料費の削減:蓄電池本体の材料費は、リチウムやコバルトなどの原材料価格や供給量に影響されます。原材料価格が高騰したり供給量が不足したりすると、蓄電池本体の価格も上昇します。逆に原材料価格が安定したり供給量が増えたりすると、蓄電池本体の価格も下降します。また、代替材料や新素材の開発も材料費を削減する可能性があります。
- 製造費の削減:蓄電池本体の製造費は、製造工程や品質管理などにかかるコストに影響されます。製造工程を効率化したり自動化したりすることで、製造費を削減することができます。また、品質管理を徹底したり故障率を低減したりすることで、アフターサービスや保証などにかかるコストを削減することができます。
- 性能向上:蓄電池本体の性能向上は、充放電効率や寿命などに関係します。充放電効率が高いほど、同じ容量でもより多くのエネルギーを貯めたり使ったりできます。寿命が長いほど、同じ期間でもより多くの回数を充放電できます。性能向上は、技術革新や研究開発によって実現されます。
パワーコンディショナー(パワコン)
パワコンは、蓄電池と太陽光発電や電力会社の系統との間で、電圧や周波数などを調整する装置です。
パワコンの価格は、パワコンの種類や容量、性能によって異なります。
一般的には、蓄電池と太陽光発電を同時に導入する場合は、両方に対応したハイブリッド型のパワコンが必要であり、価格が高くなります。
パワコンのコスト低減要素は、主に以下のようなものです。
- 規格化:パワコンは、蓄電池や太陽光発電との互換性や電力会社の系統連系の技術基準などに適合しなければなりません。規格化されたパワコンは、設計や製造が容易であり、価格が低くなります。また、規格化されたパワコンは、市場での競争力も高くなります。
- 効率化:パワコンは、電圧や周波数などを調整する際に、一定のエネルギー損失が発生します。効率化されたパワコンは、エネルギー損失を最小限に抑えることができます。効率化されたパワコンは、同じ容量でもより少ない材料や部品で製造できるため、価格が低くなります。
設置工事
設置工事は、蓄電池とパワコンを設置する際にかかる工事費用です。設置工事の価格は、設置場所や工事内容によって異なります。
一般的には、屋外や屋根上などの設置場所は、屋内よりも工事費用が高くなります。
また、基礎工事や配線工事などの工事内容も、工事費用に影響します。設置工事のコスト低減要素は、主に以下のようなものです。
- 基礎工事の省略:基礎工事とは、蓄電池やパワコンを設置するために必要な土台や支柱などを作る工事です。基礎工事が必要な場合は、工事費用が高くなります。しかし、基礎工事が不要な蓄電池やパワコンもあります。例えば、壁掛け型やスタンド型の蓄電池やパワコンは、既存の壁や床に取り付けることができるため、基礎工事が不要です。
- 配線工事の簡素化:配線工事とは、蓄電池やパワコンと太陽光発電や電力会社の系統とをつなぐために必要な配線や接続器具などを設置する工事です。配線工事が複雑な場合は、工事費用が高くなります。しかし、配線工事が簡素化された蓄電池やパワコンもあります。例えば、無線通信機能を備えた蓄電池やパワコンは、配線や接続器具を減らすことができるため、配線工事が簡素化されます。
蓄電池本体価格の低減要素
蓄電池本体価格は、主に以下のような要因で低減してきました。
- 材料費の削減:蓄電池に使用される材料は、リチウムやコバルトなどの希少金属や化合物です。これらの材料は需要が高まると供給が不足し、価格が上昇する傾向があります。しかし、近年では、材料を効率的に利用する技術や代替材料の開発が進んでおり、材料費が削減されています。
- 製造費の削減:蓄電池を製造する際には、高温や高圧などの特殊な条件が必要です。これらの条件を満たすためには、高度な設備や技術が必要です。しかし、近年では、製造プロセスや設備を改善する技術や量産効果が発揮されており、製造費が削減されています。
- 性能向上:蓄電池の性能は、容量や効率や寿命などで評価されます。これらの性能は、蓄電池本体価格に影響します。性能が高ければ価格も高くなりますが、性能が低ければ価格も安くなります。しかし、近年では、性能を高めるとともに価格を下げる技術が開発されており、コストパフォーマンスが向上しています。
以上のように、蓄電池本体価格は、材料費や製造費の削減や性能向上などの要因で低減してきました。
パワーコンディショナー価格の低減要素
パワーコンディショナー価格は、主に以下のような要因で低減してきました。
- 規格化:パワーコンディショナーは、蓄電池と太陽光発電や送配電網を接続するための装置です。しかし、蓄電池や太陽光発電や送配電網の規格は、メーカーや国によって異なります。そのため、互換性のあるパワーコンディショナーを選ぶことが必要です。しかし、近年では、国際的な規格や基準が策定されており、パワーコンディショナーの規格化が進んでいます。規格化によって、パワーコンディショナーの開発や生産が容易になり、価格が下がります。
- 効率化:パワーコンディショナーは、直流電流と交流電流を変換するための装置です。しかし、変換する際には、一部の電力が損失してしまいます。そのため、変換効率が高いほど、電力の有効利用ができます。近年では、変換効率を高める技術が開発されており、パワーコンディショナーの効率化が進んでいます。効率化によって、パワーコンディショナーのサイズや重量が小さくなり、価格が下がります。
以上のように、パワーコンディショナー価格は、規格化や効率化などの要因で低減してきました。
設置工事費の低減要素
設置工事費は、主に以下のような要因で低減してきました。
- 屋内設置:蓄電池を設置する場所は、屋外か屋内かによって異なります。屋外設置は防水・防塵・防熱などの対策が必要であり、屋内設置よりも工事費が高くなります。しかし、近年では、小型・軽量・高性能な蓄電池が開発されており、屋内設置が可能になっています。屋内設置によって、工事費が下がります。
- 施工業者の増加:蓄電池を設置する際には、専門的な知識や技術を持った施工業者に依頼する必要があります。しかし、過去には施工業者が少なくて需要に対応できず、工事費が高くなっていました。しかし、近年では蓄電池市場の拡大に伴って施工業者も増えており、競争が激化しています。競争が激化すると、価格やサービスなどで優位性を示そうとするため、消費者にとってはメリットがあります。
2.蓄電システムの導入費用
蓄電システムには、様々なメリットがあります。例えば、
- 停電時にも安心して電気を使える
- 電気料金を節約できる
- 環境にやさしい
- 災害時に自家発電できる
などです。しかし、蓄電システムを導入するには、それなりの費用がかかります。
では、具体的にどれくらいの費用がかかるのでしょうか?ここでは、導入費用について詳しく解説します。
①導入費用に含まれるもの
蓄電システムの導入費用は、主に以下の3つの要素で構成されます。
蓄電池本体価格
蓄電池本体価格とは、蓄電池自体の価格です。蓄電池本体価格は、メーカーや容量、機能などによって異なります。
一般的には、容量が大きく、機能が豊富なほど高価になります。また、蓄電池の種類によっても価格が変わります。
主な蓄電池の種類としては、
- リチウムイオン蓄電池
- 鉛蓄電池
- NAS(ナトリウム・硫黄)蓄電池
などがあります。
リチウムイオン蓄電池は小型・軽量・高性能であり、家庭用蓄電池として最も一般的ですが、高価です。
鉛蓄電池は安価で長寿命ですが、大型・重量・低効率であり、非常用電源として使われます。
NAS蓄電池は大容量・長寿命であり、産業用や地域用として使われますが、高温・危険物管理が必要です。
設置工事費
設置工事費とは、蓄電池を設置するために必要な工事費です。設置工事費は、設置場所や施工業者によって異なります。一般的には、
- 屋外設置
- 屋内設置
の2種類があります。
屋外設置は、屋外に専用の台座やボックスを設置してそこに蓄電池を固定する方法です。
屋内設置は、屋内にある壁や床に直接取り付ける方法です。屋外設置は防水・防塵・防熱などの対策が必要であり、屋内設置よりも工事費が高くなります。
また、施工業者によっても工事費は変わりますので、複数の見積もりを比較することが大切です。
電気工事費
電気工事費とは、蓄電池を電気回路に接続するために必要な工事費です。電気工事費は、以下のような工事が含まれます。
- 配線工事
- パワーコンディショナーの設置
- 太陽光発電との連携工事
- モニターの設置
などです。電気工事費は、配線の長さや難易度、施工業者によって異なります。
また、太陽光発電と連携する場合は、既存の太陽光発電システムとの互換性や改造範囲によっても変わります。
電気工事は専門的な知識や技術が必要ですので、信頼できる施工業者に依頼することが重要です。
②導入費用の平均的な相場
以上の3つの要素を合計した金額が蓄電システムの導入費用となります。では、平均的な相場はどれくらいなのでしょうか?一般的には、
- 低価格帯:60~100万円
- 標準価格帯:100~200万円
- 高価格帯:200万円以上
と言われています。
低価格帯は、容量や機能が限られた蓄電池や、屋内設置で工事費が安い場合です。
標準価格帯は、容量や機能が平均的な蓄電池や、屋外設置で工事費が普通の場合です。
高価格帯は、容量や機能が豊富な蓄電池や、屋外設置で工事費が高い場合です。実際に導入した家庭の40%は100~180万円の標準価格帯の蓄電池を設置しています。
もちろん、これらはあくまで目安です。実際の導入費用は、個々のニーズや条件によって変わります。
また、補助金制度を利用すれば、導入費用を大幅に削減することができます。
③補助金制度
蓄電システムを導入する際には、国や地方自治体から補助金を受けることができる場合があります。補助金制度は、
- 国から受けられる補助金
- 地方自治体から受けられる補助金
の2種類があります。それぞれの特徴と条件を見ていきましょう。
国から受けられる補助金
国から受けられる補助金としては、
- 電力需給ひっ迫等に活用可能な家庭・業務産業用蓄電システム導入支援事業
- 蓄電池等の分散型エネルギーリソースを活用した次世代電力システム構築支援事業
の2つがあります。これらの補助金は、蓄電池と太陽光発電を組み合わせたシステムを導入する場合に適用されます。補助金の額は、蓄電池の容量や設置場所、導入時期などによって異なりますが、一般的には、
- 電力需給ひっ迫等に活用可能な家庭・業務産業用蓄電システム導入支援事業:蓄電池本体価格の1/3~1/2
- 蓄電池等の分散型エネルギーリソースを活用した次世代電力システム構築支援事業:蓄電池本体価格の1/2~2/3
となっています。
ただし、これらの補助金は予算が限られており、先着順で申請する必要があります。
また、申請には様々な書類や条件が必要ですので、詳細は各事業のホームページ を参照してください。
地方自治体から受けられる補助金
地方自治体から受けられる補助金としては、
- 太陽光発電・蓄電池併設システム導入促進補助金
- 蓄電池設置促進補助金
- 災害対策型蓄電池設置補助金
などがあります。これらの補助金は、国から受けられる補助金と併用することができます。
補助金の額は、地方自治体によって異なりますが、一般的には、
- 太陽光発電・蓄電池併設システム導入促進補助金:蓄電池本体価格の10~20%
- 蓄電池設置促進補助金:蓄電池本体価格の10~30%
- 災害対策型蓄電池設置補助金:蓄電池本体価格の30~50%
となっています。ただし、これらの補助金も予算が限られており、先着順や抽選で申請する必要があります。
また、申請には様々な書類や条件が必要ですので、詳細は各地方自治体のホームページを参照してください。
3.蓄電池の価格推移の歴史と現状
①2013年から2015年までの価格推移
2013年には、経済産業省が二次電池技術開発ロードマップを策定しました。
このロードマップでは、2020年までに家庭用蓄電システムの価格を9万円/kWhとする目標が掲げられました。
当時の家庭用蓄電システムの価格は約30万円/kWhでした。つまり、約3分の1に低減することが目標とされました。
この目標に向けて、政府は定置用リチウムイオン蓄電池導入促進対策事業費補助金を実施しました。
この補助金は、事業所や家庭に定置用リチウムイオン蓄電システムを導入する際の費用を一部補助するものでした。
この補助金の効果もあり、2015年までに家庭用蓄電システムの価格は約22万円/kWhまで低下しました。約8万円/kWhの低減幅を達成したことになります。
②2015年から2019年までの価格推移
2015年からは、需要家側エネルギーリソースを活用したVPP構築実証事業費補助金が開始されました。
VPPとは、Virtual Power Plant(仮想発電所)の略で、分散したエネルギーリソース(太陽光発電や蓄電池など)を一つの発電所として運用する仕組みです。
この補助金は、VPPに参加するために家庭用蓄電システムを導入する際の費用を一部補助するものでした。
この補助金は、目標価格を下回った製品のみ対象とし、価格低減を促す仕組みでした。
また、2019年からは、災害時に活用可能な家庭用蓄電システム導入促進事業費補助金が実施されました。
この補助金は、災害時に停電しても自立運転が可能な家庭用蓄電システムを導入する際の費用を一部補助するものでした。
この補助金は、東日本大震災や平成30年台風第21号などの大規模な自然災害を受けて、電力の安定供給と地域の防災力向上を目的として設けられました。
これらの補助金の効果もあり、2019年までに家庭用蓄電システムの価格は約20万円/kWhまで低下しました。約2万円/kWhの低減幅を達成したことになります。
しかし、2020年の目標価格である9万円/kWhにはまだ届いていません。
③2019年から2022年までの価格推移
2019年から2022年までの期間には、蓄電池の価格はさらに下がると予想されていましたが、実際にはそうなりませんでした。
その理由としては、以下のような要因が考えられます。
- コロナ禍による需要減少やサプライチェーンの混乱:新型コロナウイルスの感染拡大に伴って、世界的な経済活動が停滞しました。その影響で、蓄電池の需要が減少し、製造や輸送にも支障が出ました。特に、中国や韓国などの主要な蓄電池生産国では、工場の稼働率が低下したり、原材料や部品の調達が困難になったりしました。これらの要因によって、蓄電池の価格低下が遅れたと考えられます。
- 鉱物資源や材料の高騰:蓄電池を作るために必要な鉱物資源や材料は、世界的な需要と供給のバランスによって価格が変動します。近年では、電気自動車(EV)や再生可能エネルギーなどの普及に伴って、リチウムやコバルト、ニッケルなどの需要が高まっています。一方で、これらの資源は産出国が限られており、供給量が不安定です。特に、中国はこれらの資源を独占的に確保しようとしており、他国への輸出を制限しています。これらの要因によって、鉱物資源や材料の価格が高騰しました。これも蓄電池の価格低下を阻害したと考えられます。
- 技術革新や競争力強化への投資:蓄電池メーカーや素材メーカーは、技術革新や競争力強化を目指して研究開発や設備投資を行っています。例えば、全固体電池やコバルトレス電池などの次世代蓄電池技術への取り組みや、エネルギー密度や安全性などを向上させるための材料開発や製造工程改善などです。これらの投資は中長期的にはコスト削減につながりますが、短期的にはコスト増加になります。これも蓄電池の価格低下に影響しました。
④2023年以降の価格動向
では、2023年以降には蓄電システムの価格はどうなるでしょうか。残念ながら、今後も価格が大きく下がるという見込みはありません。
これは、リチウムイオン電池の需要がEV車やスマートフォンなどで急増し、原材料や生産設備などのコストが上昇することが予想されるためです。
一方で、蓄電システムの需要は今後も高まると考えられます。
これは、太陽光発電設備を導入した家庭が増えており、その余剰電力を有効活用するために蓄電システムが必要となるからです。
特に、2024年以降にFIT(固定価格買取制度)から卒FIT(FIT期間終了後)に移行する家庭が多くなりますが、その場合には売電価格が大幅に下がるため、自家消費率を高めることが重要になります。
また、災害時やピーク時などに自家発電した電力を送り出すV2H(Vehicle to Home)やV2G(Vehicle to Grid)といった新しいサービスも登場しています。
これらのサービスは、EV車のバッテリーを蓄電システムとして利用することで、電力の安定供給や収入の獲得などが可能になります。
しかし、これらのサービスを利用するには、蓄電システムとEV車を連携させるための専用のパワーコンディショナーやインターフェースなどが必要になります。
以上のことから、2023年以降の蓄電システムの価格は、過去のような大幅な下落は見込めないものの、需要は高まると予想されます。
そのため、蓄電システムを導入するタイミングは、補助金や支援制度が利用できるうちに早めに行うことがおすすめです。
また、自分の家庭の電気使用量や太陽光発電設備の発電量に合わせて、最適な容量や性能の蓄電システムを選ぶことが大切です。
⑤日本の蓄電システム価格は、海外と比べて高額
日本の家庭用蓄電システム価格は、海外と比べて高額であったことが分かります。
例えば、2019年の時点で、ドイツでは約14.2万円/kWh、オーストラリアでは約9.3万円/kWh、アメリカでは約6.2万円/kWhという価格水準でした。
これらの国では、政府の補助金や高い電気料金、自家消費率向上などが蓄電システム普及のドライバーとなっています。
特に注目されるのは、アメリカのテスラ社が開発した家庭用蓄電システム「Powerwall」です。
この製品は、13.5kWhという大容量でありながら、約6.2万円/kWhという低価格で販売されています。
この価格は、日本国内で市販されている家庭用蓄電システムの約3分の1です。
テスラ社は、直販モデルや大量生産によってコスト削減を実現しています。
この製品は、2020年から日本でも発売されており、市場に影響を与える可能性があります。
⑤価格だけで判断しないこと
蓄電池の価格は重要な要素ですが、それだけで判断するのは危険です。蓄電池を導入する際には、以下のような点も考慮する必要があります。
- 蓄電容量:自分の家庭の電気使用量や太陽光発電設備の発電量に合わせて選ぶことが大切です。容量が小さすぎると余剰電力を有効活用できず、容量が大きすぎるとコストパフォーマンスが悪くなります。
- 耐久性:蓄電池は長期間使うものですから、劣化や故障に強いものを選ぶことが重要です。メーカーや製品によって寿命や保証期間が異なりますので、比較検討することが必要です。
- 機能性:蓄電池には、災害時に自動的に切り替わるバックアップ機能や、電力会社との売電や調整電力の契約ができるスマートメーター連携機能などがあります。自分のニーズに合わせて、必要な機能を備えたものを選ぶことが大切です。
- 補助金や支援制度:国や地方自治体などが蓄電池の導入を支援する補助金や支援制度があります。これらを利用すれば、導入費用を大幅に削減することができます。ただし、これらの補助金や支援制度は予算が限られており、先着順や抽選で申請する必要があります。また、申請には様々な書類や条件が必要ですので、詳細は各事業者や自治体のホームページを参照してください。
おわりに
以上が、蓄電池の価格推移の背景と今後の展望についての解説でした。
日本では、政府の補助金や技術開発によって蓄電池価格が低下してきましたが、目標価格にはまだ達していません。
また、海外ではさらに低価格な蓄電池が普及しており、競争力が高まっています。
今後は、蓄電池価格だけでなく、性能や安全性、サービスなども重要な要素となるでしょう。
蓄電池はエネルギー変革や脱炭素化に欠かせない技術です。その普及拡大に向けて、さらなる取り組みが期待されます。