3Dプリンターは、自分の思い描いたものを立体的に作り出すことができる画期的な技術です。
しかし、3Dプリンターを使うには、まず3Dデータを作る必要があります。
そのためには、3DCADというソフトウェアを使うのが一般的です。
しかし、3DCADは高価で難しいというイメージがあります。
そこで、この記事では、3Dプリンターで使う無料CADのおすすめをご紹介します。
1. 3Dプリンターで使うCADとは?
3Dプリンターで物体を作るには、3次元モデルのデータを3Dプリンターが読み込める形式に変換する必要があります。
ここでは、3Dプリンターで使われるデータ形式と、その作成方法について解説します。
①3Dプリンターで使われるデータ形式
3Dプリンターで使われるデータ形式には、主に以下の2種類があります。
- STL(ステレオリソグラフィ)形式
- OBJ(オブジェクト)形式
STL形式は、3次元モデルを多数の三角形で近似したメッシュデータとして表現する形式です。
三角形の数が多ければ多いほど、モデルの表面が滑らかになりますが、ファイルサイズも大きくなります。
STL形式は、3Dプリンターの標準的な入力形式として広く普及しており、ほとんどの3Dプリンターが対応しています。
OBJ形式は、STL形式と同様にメッシュデータとして表現する形式ですが、色やテクスチャなどの情報も含めることができます。
OBJ形式は、3Dプリンターだけでなく、3Dグラフィックスやゲームなどでもよく使われる汎用的な形式です。
ただし、色やテクスチャを含むOBJファイルを3Dプリンターで出力するには、対応する3Dプリンターと専用のソフトウェアが必要です。
②3Dプリンター用データの作成方法
3Dプリンター用データを作成するには、CAD(コンピュータ支援設計)ソフトウェアを使います。
CADソフトウェアとは、コンピューター上で物体の形や寸法を設計するソフトウェアのことです。
CADソフトウェアには、様々な種類がありますが、大きく分けて以下の2種類があります。
- パラメトリック型
- ダイレクト型
パラメトリック型のCADソフトウェアは、物体の形や寸法を数値や数式で定義することで、精密なモデルを作成することができます。
パラメトリック型のCADソフトウェアは、工業製品や建築物などの設計に向いています。
パラメトリック型のCADソフトウェアの代表的な例としては、SolidWorksやAutoCADなどがあります。
ダイレクト型のCADソフトウェアは、物体の表面を直接操作することで、自由度の高いモデルを作成することができます。
ダイレクト型のCADソフトウェアは、キャラクターやアートなどの造形に向いています。
ダイレクト型のCADソフトウェアの代表的な例としては、BlenderやZBrushなどがあります。
どちらのタイプのCADソフトウェアでも、作成した3次元モデルをSTL形式やOBJ形式に変換して、3Dプリンターで出力することができます。
ただし、CADソフトウェアで作成したモデルが3Dプリンターで正しく出力されるかどうかは、以下のような要因によって異なります。
- モデルのサイズや複雑さ
- 3Dプリンターの種類や性能
- 3Dプリンターの設定や操作
- 使用する素材や色
2. おすすめの無料CADは「Fusion 360」
CADを使うと、3Dモデルを作成したり、図面を作成したり、シミュレーションや解析を行ったりできます。
CADは、工業製品や建築物などの設計に欠かせないツールですが、多くのCADソフトウェアは高価で、初心者には使いにくいものもあります。
そこで、おすすめの無料CADとして紹介したいのが「Fusion 360」です。
Fusion 360は、オートデスク社が提供するクラウドベースの高機能3D CAD/CAM/CAE/PCB統合システムです。
Fusion 360は、以下のような特徴とメリットがあります。
①Fusion 360の特徴とメリット
- 柔軟性の高い3Dモデリングと設計: Fusion 360では、パラメトリック、フリーフォーム、サーフェス、メッシュの各モデリング手法を組み合わせてハイブリッドにモデリングが可能です。あらゆる形状を作成できるだけでなく、ジェネレーティブ デザイン機能により、製造可能で仕様を満たす複数の設計案を検討できます。
- 統合されたPCB設計と電気制御設計:Fusion 360では、回路図、PCB、ライブラリ、シミュレーション、機械設計を統合できます。メカ設計と電気設計を同時に進めることができるだけでなく、押しボタン式のSPICEシミュレーションや無制限の階層回路図のキャプチャなどの便利な機能もあります。
- 統合されたCAMと積層造形:Fusion 360では、2軸から5軸までの加工や積層造形などの製造方法に対応しています。高品質なCNC加工パーツや金属3Dプリンティングパーツを製造できるだけでなく、板金部品の加工のためのネスティング自動生成と最適化などの拡張機能もあります。
- シームレスな3Dシミュレーションと解析: Fusion 360では、有限要素解析(FEA)、テスト、シミュレーションなどの機能が統合されています。設計が製品の仕様に対して適切かどうかを解析したり、クラウドベースのマシンの学習とAIを使用したトポロジとシェイプの最適化を行ったりできます。
- クラウドコラボレーションとデータ管理:Fusion 360では、クラウド上でプロジェクトやデータを管理できます。分散したチームをリアルタイムで連携させたり、コメントやフィードバックを共有したりできます。また、フォトリアルなレンダリングやドキュメント作成などの機能もあります。
- 無料で利用できる:Fusion 360は、個人用や教育用には無料で利用できます。年間総収益が10万円未満の個人ユーザーや、学生や教員などの教育関係者は、Fusion 360の基本機能に無償でアクセスできます。また、無償体験版では、全機能を30日間試すことができます。
②Fusion 360の使い方
Fusion 360を使うには、まずオートデスク社のサイトからダウンロードしてインストールします。
インストール後に起動すると、ログイン画面が表示されます。
オートデスクアカウントを持っている場合は、メールアドレスとパスワードを入力してログインします。
持っていない場合は、新規作成してログインします。
ログインすると、Fusion 360のメイン画面が表示されます。メイン画面には、以下のような要素があります。
- データパネル:プロジェクトやファイルを管理するためのパネルです。左上のアイコンをクリックすると開閉できます。
- ブラウザ:モデルの構造やコンポーネントを表示するためのパネルです。左側にあります。
- キャンバス:3Dモデルを表示するための領域です。中央にあります。
- ツールバー:各種のコマンドや機能にアクセスするためのバーです。上部にあります。
- タイムライン:モデルの履歴や操作を表示するためのバーです。下部にあります。
Fusion 360では、以下のような基本的な操作ができます。
- モデルの作成:ツールバーの「スケッチ」や「モデル」から、各種のモデリング手法を選択して、3Dモデルを作成できます。
- モデルの編集:タイムラインやブラウザから、モデルの履歴やコンポーネントを選択して、編集できます。
- モデルの移動や回転:キャンバス上でマウスをドラッグしたり、キーボードのショートカットを使って、モデルを移動や回転させることができます。
- モデルの拡大や縮小:マウスホイールを回したり、キーボードのショートカットを使って、モデルを拡大や縮小させることができます。
- モデルの表示方法の変更:右上のビューキューブやビューコントロールから、モデルの表示方法を変更できます。例えば、透視図や平行投影図に切り替えたり、グリッドや軸を表示したり非表示にしたりできます。
3. Fusion 360で作ったデータを3Dプリンターで出力する方法
3Dプリンターとは、コンピューターで作成した3次元モデルを実際の物体に造形する機器です。
3Dプリンターで物体を作るには、3次元モデルのデータを3Dプリンターが読み込める形式に変換する必要があります。
この記事では、Fusion 360で作ったデータを3Dプリンターで出力する方法について解説します。
①STLファイルに変換する
Fusion 360で作ったデータは、そのままでは3Dプリンターで出力できません。
3Dプリンターで出力するには、STL(ステレオリソグラフィ)形式というメッシュデータに変換する必要があります。
STL形式は、3Dプリンターの標準的な入力形式として広く普及しており、ほとんどの3Dプリンターが対応しています。
Fusion 360でSTLファイルに変換するには、以下の手順を実行します。
- Fusion 360のメイン画面で、ブラウザから出力したいコンポーネントやボディを右クリックします。
- ポップアップメニューから「STL形式で保存」を選択します。
- 「STL形式で保存」ダイアログボックスが表示されます。ここでは、以下の設定を行います。
- 「単位」:出力するSTLファイルの単位を選択します。一般的には、ミリメートル(mm)かインチ(in)を選びます。
- 「精度」:出力するSTLファイルの精度を選択します。精度が高いほど、三角形の数が多くなり、ファイルサイズも大きくなります。一般的には、中程度(Medium)か高(High)を選びます。
- 「構造」:出力するSTLファイルの構造を選択します。一般的には、バイナリ(Binary)かASCII(ASCII)を選びます。バイナリはファイルサイズが小さくなりますが、ASCIIはテキストエディタで編集できます。
- 設定が終わったら、「OK」ボタンをクリックします。
- 「名前を付けて保存」ダイアログボックスが表示されます。ここでは、以下の設定を行います。
- 「名前」:出力するSTLファイルの名前を入力します。
- 「場所」:出力するSTLファイルの保存先を選択します。
- 設定が終わったら、「保存」ボタンをクリックします。
以上で、Fusion 360で作ったデータをSTLファイルに変換することができました。
②スライスソフトで設定する
STLファイルに変換したデータは、まだ3Dプリンターで出力できません。3Dプリンターで出力するには、スライスソフトというソフトウェアを使って、さらに設定する必要があります。
スライスソフトとは、STLファイルをレイヤーごとに分割して、3Dプリンターが理解できる命令コード(Gコード)に変換するソフトウェアのことです。
スライスソフトでは、以下のような設定を行います。
- プリントサイズや位置:STLファイルのモデルをプリントベッドに合わせて、サイズや位置を調整します。
- プリント品質や速度:レイヤーの高さやノズルの温度、プリント速度などを設定します。品質が高いほど、レイヤーの高さが低くなり、プリント時間も長くなります。
- サポートやインフィル:モデルの下部や空洞部分に必要なサポート構造や内部の充填率を設定します。サポートやインフィルが多いほど、プリント時間や素材の消費量も多くなります。
- その他のオプション:モデルの表面や強度を改善するためのオプションを設定します。例えば、ブリムやスカート、ラフトというプリントベッドに付ける構造物や、シェルやトップ/ボトムレイヤーというモデルの外壁や上下面のレイヤー数などです。
スライスソフトには、様々な種類がありますが、代表的なものとしては、以下のようなものがあります。
- Cura:アルティメーカー社が提供する無料で使えるスライスソフトです。多くの3Dプリンターに対応しており、直感的で使いやすいインターフェースが特徴です。
- Simplify3D:Simplify3D社が提供する有料で使えるスライスソフトです。高品質で高速なスライスエンジンや高度な設定オプションが特徴です。
- Slic3r:オープンソースで開発されている無料で使えるスライスソフトです。柔軟性とカスタマイズ性が高く、多くの3Dプリンターに対応しています。
どのスライスソフトを使うかは、自分の3Dプリンターや目的に合わせて選ぶことができます。ここでは、Curaを例にして、STLファイルをスライスする方法を説明します。
CuraでSTLファイルをスライスするには、以下の手順を実行します。
- Curaをダウンロードしてインストールします。インストール後に起動すると、初回起動時には3Dプリンターの設定画面が表示されます。自分の3Dプリンターに合った設定を選択して、「完了」ボタンをクリックします。
- Curaのメイン画面で、「ファイル」メニューから「開く」を選択し、STLファイルを開きます。
- STLファイルがキャンバス上に表示されます。必要に応じて、「移動」、「拡大縮小」、「回転」などのツールでモデルの位置やサイズや向きを調整します。
- 右側のパネルで、「推奨」または「カスタム」から、各種の設定を行います。「推奨」では、基本的な設定項目が表示されます。「カスタム」では、詳細な設定項目が表示されます。設定項目には、以下のようなものがあります。
- 「品質」:レイヤーの高さやライン幅などを設定します。
- 「シェル」:壁の厚さやトップ/ボトムレイヤーの数などを設定します。
- 「インフィル」:内部の充填率やパターンなどを設定します。
- 「素材」:ノズルの温度やベッドの温度、フロー率などを設定します。
- 「速度」:プリント速度や移動速度、加速度などを設定します。
- 「旅行」:移動時のノズルの高さや引き戻し量などを設定します。
- 「クーリング」:ファンの速度や最小レイヤー時間などを設定します。
- 「サポート」:サポート構造の有無や位置、角度、密度などを設定します。
- 「ビルドプレートアドヘーション」:ブリムやスカート、ラフトなどの有無やサイズなどを設定します。
- 設定が終わったら、「スライス」ボタンをクリックします。
- STLファイルがGコードに変換されます。変換が終わると、「プレビュー」タブでレイヤーごとにプリントの様子を確認できます。
- また、「保存してリムーバブルドライブに送る」ボタンでGコードファイルをSDカードやUSBメモリに保存できます。
以上で、STLファイルをスライスすることができました。
③3Dプリンターで印刷する
スライスしたGコードファイルを3Dプリンターで出力するには、以下の手順を実行します。
- 3Dプリンターの電源を入れて、プリントベッドとノズルの温度を設定します。温度は、使用する素材に合わせて調整します。一般的には、PLA(ポリ乳酸)は190℃~220℃、ABS(アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン)は230℃~250℃です。
- プリントベッドとノズルの位置を調整します。プリントベッドとノズルの距離が適切でないと、プリント品質が低下したり、失敗したりする可能性があります。一般的には、プリントベッドとノズルの距離は紙一枚分くらいにすると良いです。
- SDカードやUSBメモリに保存したGコードファイルを3Dプリンターに挿入します。3Dプリンターの画面からGコードファイルを選択して、「印刷開始」または「印刷」ボタンを押します。3Dプリンターが動き始めます。
- 3Dプリンターが動いている間は、手を触れたり、動かしたりしないでください。また、温度が高い部分に注意してください。印刷が終わるまで待ちます。印刷時間は、モデルのサイズや複雑さ、設定によって異なります。
- 印刷が終わったら、3Dプリンターの電源を切ります。プリントベッドとノズルの温度が下がったら、プリントベッドからプリント物を取り外します。必要に応じて、サポート構造やブリムなどを除去します。
おわりに
この記事では、3Dプリンターで使う無料CADのおすすめとして「Fusion 360」をご紹介しました。
Fusion 360は、初心者でも簡単に3Dモデリングができるソフトウェアです。また、3Dプリンターとの連携もスムーズです。
Fusion 360を使えば、あなたも自分だけのオリジナル作品を3Dプリンターで出力することができます。
ぜひ、この機会にFusion 360をダウンロードしてみてください。あなたの創造力を発揮してください。
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