少子化は、人口が減少することで、労働力や消費力が低下し、経済成長が停滞する可能性があります。
また、高齢者の割合が増えることで、社会保障費や医療費が増大し、財政や福祉にも負担がかかります。
さらに、少子化は文化や伝統の継承や多様性の維持にも影響を与えるかもしれません。
少子化は、個人や家族だけでなく、国や地域、世界全体にとって重要な課題です。
1.少子化の原因
①出生率の低下
日本では、出生率は長年にわたって低下しており、2021年には過去4番目に低い1.30になりました。
出生率の低下は、人口減少や高齢化など、さまざまな社会的・経済的な問題を引き起こします。
では、なぜ出生率が低下しているのでしょうか。
ここでは、女性の社会進出と避妊の普及、経済的な不安や教育費の高騰、結婚や出産の遅延や回避という3つの要因について考えてみましょう。
女性の社会進出と避妊の普及
日本では、女性の社会進出が進んでいます。
2020年には、15歳以上の女性の就業率が52.7%に達しました。
女性が仕事をすることは、自立や自己実現など多くのメリットがありますが、一方で、家庭と仕事の両立やキャリア形成に苦労する場合もあります。
特に、子どもを産んだり育てたりすることは、女性にとって大きな負担になることが多いです。
日本では、育児休業や保育所などの制度は整っていますが、実際に利用するときには、職場や社会からの理解や協力が不十分だったり、待機児童問題や保育料の高さなどがネックになったりします。
また、男性の育児参加もまだ十分ではありません。2020年には、男性の育児休業取得率は12.7%にとどまっています。
このように、女性が仕事を続けることと子どもを産むこととの間にはトレードオフ(相反する関係)が存在します。
そのため、女性は子どもを産むことを後回しにしたり、あきらめたりする傾向があります。
実際に、日本では女性の平均初婚年齢が29.6歳、平均初産年齢が30.7歳と高くなっています。また、子どもを持たない女性の割合も増えています。
2020年には、50歳未満の既婚女性のうち子どもを持たない割合が15.9%でした。
もう一つの要因として、避妊の普及が挙げられます。日本では、ピルやコンドームなど様々な避妊方法が利用されています。
避妊は、望まない妊娠や性感染症を防ぐために重要ですが、一方で出生率にも影響を与えます。
避妊方法が広く使われるようになると、子どもを産むタイミングや数を自由にコントロールできるようになります。
その結果、子どもを産むことに対する意思や計画が弱くなったり、他の要因に左右されやすくなったりします。
実際に、日本では避妊の普及とともに、計画外妊娠や中絶の割合が減少しています。
これは、望まない妊娠を防ぐことができるという意味では良いことですが、一方で出生率にも影響を与える可能性があります。
経済的な不安や教育費の高騰
日本では、経済的な不安や教育費の高騰も出生率の低下に影響しています。
日本は長期的な経済停滞や少子高齢化により、所得や資産が伸び悩んでいます。
特に、若い世代は非正規雇用や低賃金などの不安定な状況に置かれています。
2020年には、15~34歳の非正規雇用者の割合が37.5%に達しました。また、新型コロナウイルス感染症の流行は、雇用や収入にさらなる打撃を与えています。
2021年には、15~34歳の失業率が4.5%、同世代の世帯年収は平均で518.7万円と低くなっています。
このように、若い世代は経済的な余裕がない状況にあります。
そのため、結婚や出産をすることに対して不安や消極的な態度を持つようになります。実際に、日本では未婚者の割合が高くなっています。
2020年には、18~34歳の未婚者の割合が男性で70.8%、女性で59.8%でした。また、子どもを持つことに対する意向も低下しています。
2020年には、18~34歳の未婚者のうち子どもを持ちたいと答えた割合が男性で49.5%、女性で54.3%でした。
また、子どもを産んだり育てたりすることにかかる費用も高くなっています。特に教育費は大きな負担です。
日本では、高校入学から大学卒業までにかける子ども1人当たりの教育費用は平均で942.5万円と高額です。
また、教育費は年々上昇しており、物価高騰やコロナ禍の影響もあります。このように教育費が高いと、子どもを産むことや多くの子どもを持つことが難しくなります。
実際に、日本では子ども1人当たりの教育費用と出生率には負の相関が見られます。
結婚や出産の遅延や回避
日本では、結婚や出産を遅延したり回避したりする傾向があります。
これは上述した女性の社会進出や経済的な不安などが要因として関係していますが、それだけでは説明できない側面もあります。日本では結婚や出産を遅延したり回避したりする傾向があります。
これは上述した女性の社会進出や経済的な不安などが要因として関係していますが、それだけでは説明できない側面もあります。
日本では結婚や出産に対する価値観や態度が変化しています。結婚や出産は個人の自由な選択であり、社会的な義務や期待に縛られるべきではないという考え方が広まっています。
また、結婚や出産は幸せや充実感をもたらすという前提も揺らいでいます。
実際に、日本では結婚や出産に対する意欲や満足度が低くなっています。
2020年には、18~34歳の既婚者のうち結婚生活に満足している割合が男性で57.4%、女性で54.9%でした。
また、子どもを持っている既婚者のうち子どもに対する満足度が高い割合が男性で64.4%、女性で63.8%でした。
このように、日本では結婚や出産に対するモチベーションやインセンティブが低くなっています。
その結果、結婚や出産を遅らせたり、あきらめたり、あるいはしないことを選択したりする人が増えています。これは、出生率の低下に大きく影響しています。
②平均寿命の延長
日本は世界でも有数の少子高齢化社会です。2020年の出生数は86万5,239人と過去最少を記録し、合計特殊出生率は1.36となりました。
一方で、平均寿命は男性が81.64歳、女性が87.74歳と世界トップレベルに達しています。
このように、出生率の低下と平均寿命の延長が少子化の原因となっていますが、その背景にはどのような要因があるのでしょうか。
ここでは、平均寿命の延長について考えてみましょう。
平均寿命の延長には、医療技術の発達と生活環境の改善、高齢者の健康意識と予防医療の普及などが関係しています。
医療技術の発達と生活環境の改善
日本では医療技術が進歩し、感染症や慢性疾患などの治療や予防が可能になりました。
また、医療制度も充実し、誰でも安価で高水準の医療を受けることができます。
さらに、生活環境も改善し、食事や衛生、住宅などの基本的な生活条件が向上しました。
これらの要因により、日本人は健康的に長生きすることができるようになりました。
平均寿命は1947年には50歳代だったものが、その後着実に延び続けています。
2020年には男性81.56歳、女性87.71歳と前年に比べて男性は0.15年、女性は0.26年上回りました。
今後も平均寿命は延びていくと見込まれており、2060年には男性84.19歳、女性90.93歳となり、女性の平均寿命が90年を超えることが予測されています。
高齢者の健康意識と予防医療の普及
日本では高齢者も健康に対する意識が高く、運動や食事、休養などの自己管理を行っています。
また、定期的な健診や人間ドック、がん検診などの予防医療も普及しており、早期発見・早期治療を行うことで重篤化を防いでいます。
さらに、介護保険制度や高齢者福祉施設などの社会的な支援も充実しており、高齢者の生活を支えています。
これらの要因により、日本人は健康寿命も延びており、平均寿命よりも長く自立した生活を送ることができるようになりました。
健康寿命とは、「自分で日常生活を送ることができる期間」と定義される指標です。
健康寿命延伸プランでは、2016年は男性72.14歳、女性74.79歳だった健康寿命を、2040 年までに男女ともに3年以上延伸し(2016年比)、75歳以上とすることを目指しています(男性75.14歳以上、女性77.79歳以上)。
2.少子化の現状
少子化は世界的な課題であり、経済や社会にさまざまな影響を及ぼします。
ここでは、世界の人口動態、人口減少国と人口増加国の格差、人口構造の高齢化と逆転、アフリカを除く地域での出生率低下について解説します。
①世界の人口動態
世界の人口は現在約78億人ですが、今後どのように変化するでしょうか。
国連が2020年に発表した「世界人口予測」によると、2050年には約97億人、2100年には約109億人に達すると推計されています。
しかし、この推計は出生率や死亡率、移民などの仮定に基づいています。もし出生率が予想よりも低下したり、死亡率が予想よりも上昇したりした場合は、人口増加のペースは遅くなります。
実際、2019年から2020年にかけて新型コロナウイルス感染症の流行により、多くの国で死亡者数が増加し、出生者数が減少しました。この影響は今後も続く可能性があります。
人口減少国と人口増加国の格差
世界全体では人口が増加していますが、地域や国によっては人口が減少しているところもあります。
例えば、日本は2008年ごろから人口減少局面に入りました。日本以外にも、ドイツやイタリア、韓国なども人口が減っていく予測となっています。
一方で、インドやナイジェリアなどは今後も人口が急増する見込みです。このように、人口減少国と人口増加国の格差は拡大していきます。
人口構造の高齢化と逆転
人口構造とは、年齢別や性別別などに分けた人口の割合や分布を表すものです。
通常、高齢化とは65歳以上の高齢者の割合が増えることを指します。
しかし、高齢化だけではなく、若年層や生産年齢層の割合が減ることも重要です。これらの割合を比較する指標として、「老年比率」や「老年負担比」などがあります。
「老年比率」とは65歳以上の高齢者数を15~64歳の生産年齢層数で割ったもので、「老年負担比」とは65歳以上の高齢者数を15歳未満と15~64歳の非生産年齢層数(総務省統計局では「非労働力層」と呼ぶ)で割ったものです。
これらの指標を見ると、日本は世界で最も高い水準にあります。2020年の老年比率は48.0%で、生産年齢層2人に対して高齢者1人という状況です。
老年負担比は76.4%で、非生産年齢層1.3人に対して高齢者1人という状況です。
このように、日本では高齢者の割合が非常に高く、生産年齢層や若年層の割合が低いという「逆転現象」が起きています。
この逆転現象は、社会保障費の増加や経済成長の低下など、さまざまな問題を引き起こします。
アフリカを除く地域での出生率低下
出生率とは、一定期間における出生数を人口で割ったもので、一般には「合計特殊出生率」と呼ばれる指標が用いられます。
これは、女性が一生に産む子どもの平均数を表すもので、2.1程度であれば世代交代が可能とされます。
世界の合計特殊出生率は2020年に2.4と推計されていますが、地域によって大きな差があります。
アフリカは4.4と最も高く、アジアは2.1、ヨーロッパは1.6と低い水準です。アフリカを除く地域では、出生率の低下が進んでおり、少子化が深刻化しています。
出生率の低下にはさまざまな要因がありますが、主なものとしては以下のようなものが挙げられます。
- 結婚や出産の遅延や回避
- 女性の教育水準や就労率の向上
- 生活水準や消費志向の変化
- 出産・育児に対する社会的支援や制度的環境の不十分であること
出生率の低下は、人口減少や高齢化を加速させるだけでなく、経済や社会にも多方面にわたって影響を与えます。
例えば、労働力不足や市場縮小、社会保障費の増加、家族構造や地域コミュニティの変化などです。
これらの影響に対応するためには、少子化対策だけでなく、高齢者や女性など多様な人材の活用やイノベーションの促進など、包括的かつ長期的な視点で政策を展開する必要があります。
②日本の人口動態
出生率と死亡率の推移
出生率とは、一定期間における出生数を人口で割ったもので、人口の増減に影響します。
死亡率とは、一定期間における死亡数を人口で割ったもので、同様に人口の増減に影響します。
出生率が死亡率を上回れば、自然増加となりますが、逆に死亡率が出生率を上回れば、自然減少となります。
日本の出生率は、戦後のベビーブームを経て、1960年代から低下傾向にあります。
特に1990年代以降は1.5未満となり、2019年には過去最低の1.36となりました。
一方、死亡率は、戦後から長期的に低下してきましたが、高齢化の進行に伴って2006年から上昇傾向に転じました。2019年には1.09となりました。
この結果、日本の自然増減は2005年から自然減少となり、2019年には約51万人の自然減少となりました。
高齢者人口と若年人口の比率
高齢者人口とは、65歳以上の人口を指し、若年人口とは、15歳未満の人口を指します。
高齢者人口と若年人口の比率は、人口構造や社会保障制度に影響します。高齢者人口が若年人口を上回ると、高齢社会と呼ばれます。
日本の高齢者人口は、1970年代から急速に増加しており、2019年には約3,590万人となりました。総人口に占める割合(高齢化率)も28.4%となりました。
これは世界最高水準です。一方、若年人口は1974年以降減少傾向にあり、2019年には約1,520万人となりました。
総人口に占める割合(若年化率)も12.1%となりました。これは世界最低水準です。
日本では1975年から高齢社会となっており、2019年時点では約2.4人の高齢者に対して1人の若年者がいる状況です。
地域間での人口移動と偏在
地域間での人口移動とは、都道府県や市町村などの行政区域をまたいで住所を変更することです。
地域間での人口移動は、地域間の経済格差や就業機会などの要因によって起こります。
地域間での人口移動が偏ると、人口の偏在が生じます。
人口の偏在とは、人口が一部の地域に集中することです。人口の偏在は、地域間の経済格差や公共サービスの不均衡などの問題を引き起こします。
日本の地域間での人口移動は、高度経済成長期には3大都市圏(東京、大阪、名古屋)へ職業を問わず幅広い階層の人々が移動しましたが、1980年代以降は高学歴層や高収入層が移動の中心となりました。
特に東京圏への移動が顕著で、2019年には約14万人の人口増加となりました。一方、東京圏以外の地域では人口減少が続いており、特に北海道や東北、九州などの辺境地域では高齢化や過疎化が進んでいます。
このように、日本では東京圏とそれ以外の地域で人口移動の傾向が大きく異なっており、人口の偏在が深刻化しています。
3.少子化への対策
少子化は、日本の経済や社会にとって深刻な課題ですが、どのような対策が必要でしょうか?ここでは、政府・社会レベルでの対策を紹介します。
①政府・社会レベルでの対策
出産・育児支援策や女性活躍推進策
少子化の原因の一つとして、出産や育児と仕事との両立が難しいことが挙げられます。
特に女性は、結婚や出産を機にキャリアを断念したり、パートタイムや非正規雇用で働くことが多く、賃金やキャリア形成に不利な状況に置かれています。
また、男性の育児参加もまだ十分ではなく、家事や育児の負担が女性に偏っています。
このような状況を改善するためには、出産・育児支援策や女性活躍推進策が必要です。具体的には、以下のような施策が考えられます。
- 保育サービスの充実:保育所の待機児童問題の解消や保育料の無償化など、保育サービスの供給と利用しやすさを向上させることで、子育て世代の就労意欲や安心感を高める。
- 児童手当の拡充:子ども一人あたり月額1万5000円(高校生まで)とすることで、子どもを持つ家庭の経済的負担を軽減する。
- 妊娠・出産支援策の強化:妊娠・出産に関する医療費の助成や不妊治療費用の補助など、妊娠・出産を希望する夫婦に対する支援を充実させる。
- 働き方改革の推進:長時間労働や残業代ゼロ法案などの是正やテレワークやフレックスタイムなどの柔軟な勤務形態の普及など、働き方改革を推進することで、仕事と家庭とのバランスを取りやすくする。
- 男性の育児休業取得促進:男性が育児休業を取得しやすくするために、育児休業中の給与補償率を引き上げたり、企業に対して男性育休取得率目標を設定したりする。
- 女性管理職登用促進:女性が活躍できる職場環境やキャリア支援制度を整備し、女性管理職登用率目標を設定し、達成状況を公表することで、女性のリーダーシップを発揮できる機会を増やす。
これらの施策は、出産・育児と仕事との両立を支援するだけでなく、女性の社会的地位や経済的自立を促進し、ジェンダー平等や多様性を尊重する社会を実現することにも寄与します。
実際に、出産・育児支援策や女性活躍推進策が充実している国では、少子化の進行が緩やかであることが指摘されています。
移民政策や多文化共生政策
少子化の原因のもう一つとして、国際的な人口移動が挙げられます。
日本は、世界で最も移民受入れ率が低い国の一つです。
しかし、少子高齢化による労働力不足や人口減少に対応するためには、外国人労働者や移民の受入れを拡大する必要があります。
特に、高度な専門知識や技能を持つ外国人や、日本に定住し家族を持つ外国人に対しては、柔軟な在留資格や永住権の付与などの優遇措置を講じることが望ましいです。
ただし、外国人の受入れだけでは不十分です。外国人が日本社会に溶け込み、活躍できるようにするためには、移民政策や多文化共生政策も必要です。
具体的には、以下のような施策が考えられます。
- 日本語教育の充実:外国人が日本語を学べる機会や場所を増やし、日本語能力試験の受験料の助成など、日本語教育の充実を図る。
- 多言語情報提供の強化:行政サービスや災害情報など、外国人にとって必要な情報を多言語で提供し、通訳サービスや多言語コールセンターなども整備する。
- 多文化共生教育の推進:学校教育や社会教育で、多文化共生に関する理解や尊重を深める教育を推進する。
- 多文化共生支援センターの設置:外国人と日本人との交流や相談を支援する多文化共生支援センターを各地域に設置し、外国人の生活支援や社会参加を促進する。
- 多文化共生アドバイザー制度の活用:多文化共生に関する先進的な知見やノウハウを有する地方公共団体の担当部署又は職員を多文化共生アドバイザーとして登録し、多文化共生に取り組もうとする地方公共団体が、多文化共生アドバイザーを通して取組事例に基づく助言やノウハウの提供を受けることができる制度。
これらの施策は、外国人が日本社会に溶け込み、活躍できるようにするだけでなく、日本人と外国人との相互理解や協力を促進し、多文化共生や国際協調の精神を育むことにも寄与します。
実際に、移民政策や多文化共生政策が充実している国では、少子化の進行が緩やかであることが指摘されています 。
高齢者雇用促進策や年金制度改革策
少子化の結果として、高齢者人口が増加し、労働力人口が減少することで、経済成長や社会保障制度に影響を及ぼします。
特に、年金制度は、少子高齢化によって受給者数が増え、支払者数が減ることで、財政的な持続性や公平性に問題が生じます。
このような状況に対応するためには、高齢者雇用促進策や年金制度改革策が必要です。
具体的には、以下のような施策が考えられます。
- 高齢者雇用促進策:高齢者の就労意欲や能力を尊重し、雇用機会や働き方の選択肢を増やすことで、高齢者の社会参加と所得確保を支援する。例えば、定年延長や再雇用制度の拡充、シニアハローワークの設置など。
- 年金制度改革策:年金受給開始年齢の引き上げや受給額の見直し、個人型確定拠出年金(iDeCo)などの個人責任型年金制度の普及など、年金制度の財政的な持続性と公平性を確保する。また、年金制度と税制との連動や年金情報のオンライン化なども行う。
これらの施策は、高齢者の社会的地位や経済的自立を促進するだけでなく、労働力不足や社会保障費の増加などの問題に対処することにも寄与します。
実際に、高齢者雇用促進策や年金制度改革策が充実している国では、少子化の影響が軽減されていることが指摘されています 。
②個人・家族レベルでの対策
少子化は、人口減少や高齢化、経済や社会の衰退など、様々な問題を引き起こす可能性があります。
日本は、世界で最も少子化が進んだ国のひとつであり、2019年の合計特殊出生率は1.36と歴史的に低い水準にあります。
少子化に対処するためには、政府や地方自治体の施策だけでなく、個人や家族のレベルでも取り組みが必要です。
ここでは、個人・家族レベルでの対策として、生涯学習やキャリア形成、家族計画やライフスタイルの見直し、コミュニティづくりやボランティア活動などについて紹介します。
生涯学習やキャリア形成
生涯学習とは、学校を卒業した後も、自らの人格を磨き、豊かな人生を送るために、様々な場所や機会で学び続けることです。
生涯学習は、社会や経済の変化に対応するためのスキルアップや知識の更新だけでなく、心の豊かさや生きがいのための学びも含みます。
生涯学習を通じて自己実現を図ることは、個人の幸福感や健康にも貢献すると考えられます。
キャリア形成とは、自分の能力や興味を発揮し、社会に貢献できるような仕事や活動を見つけていくことです。
キャリア形成は、一度決めたら変えられないものではなく、自分自身や社会のニーズに応じて柔軟に変化させていくものです。
キャリア形成を支援するためには、教育機関や職場だけでなく、地域社会やネットワークなどでも様々な学びや経験の機会を提供することが重要です。
生涯学習やキャリア形成を促進するためには、以下のような取り組みが有効です。
- 大学や専門学校などの教育機関が社会人向けのプログラムを充実させる
- 企業が従業員の教育・研修制度を整備し、キャリアコンサルティングやメンタリングなどを行う
- 地域社会が公民館や図書館などで多様な講座やワークショップを開催し、参加者同士の交流も促す
- 個人が自分の興味や目標に合わせてインターネットや書籍などで自主的に学ぶ姿勢を持つ
家族計画やライフスタイルの見直し
家族計画とは、家庭の事情を考慮して、子どもの数や有無、間隔に関して計画的に調整することです。
家庭の事情には、母子の健康状態、経済状態、住宅などの生活環境、子どもの教育計画、夫婦の年齢や遺伝関係、夫婦のライフスタイルや職業などがあります。
家族計画を行うことで、子どもの健やかな成長や夫婦の幸せな関係を保つことができます。
ライフスタイルの見直しとは、自分や家族の価値観や目標に合わせて、生活の仕方や時間の使い方を変えることです。
ライフスタイルの見直しは、自分や家族の満足度や幸福感を高めるだけでなく、社会に対する貢献度や創造性も向上させることができます。
家族計画やライフスタイルの見直しを行うためには、以下のような取り組みが有効です。
- 夫婦で家族計画について話し合い、避妊法や不妊治療などの適切な情報や支援を受ける
- 夫婦で家事や育児の分担を決め、互いに協力し合う
- 夫婦でライフスタイルについて話し合い、仕事とプライベートのバランスや趣味・レジャーの充実などを図る
- 夫婦で将来のビジョンについて話し合い、貯蓄・投資・保険などの資産形成や住宅・移住・引退などの計画を立てる
コミュニティづくりやボランティア活動
コミュニティづくりとは、自分が住んでいる地域や興味・関心を共有する人々とつながり、協力し合って何かを創り出すことです。
コミュニティづくりは、自分自身や他者との関係性を深めるだけでなく、地域社会の活性化や課題解決にも貢献することができます。
ボランティア活動とは、自分が持っている能力や時間を無償で提供し、社会的に意義のあることに取り組むことです。
ボランティア活動は、自分自身の成長や学びにつながるだけでなく、社会的に必要とされることに対する責任感や満足感を得ることができます。
コミュニティづくりやボランティア活動を行うためには、以下のような取り組みが有効です。
- 地域の行事やイベントに参加し、近隣住民や地域団体と交流する
- 自分が興味・関心を持つテーマや活動に関するサークルや団体に参加し、仲間と協力してプロジェクトを進める
- 自分が得意な分野や経験を生かして、社会的弱者や困っている人々に対してサービスや支援を提供する
これらの取り組みは、コミュニティづくりやボランティア活動を行うことで、自分や家族の生活に彩りや充実感をもたらすだけでなく、社会に対する貢献度やつながり感を高めることにも寄与します。
実際に、コミュニティづくりやボランティア活動を行っている人は、少子化の影響を受けにくいことが指摘されています 。
おわりに
少子化は、世界的な傾向であり、今後も深刻化する可能性があります。
少子化は、個々人の価値観や選択肢に影響されるだけでなく、社会的な制度や環境にも依存します。
少子化に対応するためには、政府や社会だけでなく、個人や家族も積極的に関わる必要があります。
少子化は危機ではなく、チャンスと捉え、新しい社会のあり方を模索していきましょう。