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3Dプリンターの仕組みと種類をわかりやすく解説

3Dプリンターの仕組みと種類をわかりやすく解説 テクノロジー

3Dプリンターとは、3次元の物体をデジタルデータから作り出す装置です。最近では、工業や医療、教育などさまざまな分野で活用されています。しかし、3Dプリンターの仕組みや種類については、あまり知られていないかもしれません。そこで、この記事では、3Dプリンターの基本的な仕組みと主な造形方式について、初心者にも分かりやすく解説します。

1. 3Dプリンターの基本的な仕組み

3Dプリンターの仕組みは、大きく分けて以下の4つのステップに分かれます。

① 3Dモデルデータの作成

3Dモデルデータとは、3次元空間における物体の形や色、質感などを表現したデジタルデータです。3Dモデルデータを作成する方法には、以下のようなものがあります。

  • 3D CADソフトを使用する
  • 3D CGソフトを使用する
  • 実物を3Dスキャナーでスキャンする
  • データ作成代行サービスを利用する
  • データ配布サイトでダウンロードする

ここでは、代表的な無料ソフトであるblender(ブレンダー)とFusion360を例にして説明します。

blenderは、オープンソースで開発されている統合型3D CGソフトです。モデリングやアニメーション、レンダリングなど多様な機能があります。blenderでは、ポリゴンやスカルプトという方法で物体の形を作ります。ポリゴンとは、点を繋いでできた面です。ポリゴンを組み合わせて物体を表現します。スカルプトとは、粘土をこねるような感覚で物体の形を作ります。blenderは、人物やキャラクター、風景などを作るのに適しています。

Fusion360は、Autodesk社が提供するクラウドベースの3D CADソフトです。学生やスタートアップ企業は無料で利用できます。Fusion360では、パラメトリックモデリングという方法で物体の形を作ります。パラメトリックモデリングとは、物体の寸法や角度などを数値で指定して形を決める方法です。Fusion360は、工業製品や機械部品などを作るのに適しています。

②3Dモデルデータの変換

3Dモデルデータを作成したら、次に3Dプリンターが読み込める形式に変換する必要があります。一般的には、STL(StereoLithography)という形式がよく使われます。STLとは、ポリゴンで表現された3Dモデルデータを、三角形の面で近似した形式です。STLは、3Dプリンターの造形方式に関係なく使える汎用性の高い形式です。

3DモデルデータをSTLに変換するには、3D CADソフトや3D CGソフトのエクスポート機能を使います。blenderやFusion360では、ファイルメニューからエクスポートを選び、STLを選択して保存します。このとき、単位や精度などの設定に注意しましょう。

③造形ツールパスデータの作成

STLに変換したら、次に造形ツールパスデータというものを作ります。造形ツールパスデータとは、3Dプリンターが物体を造るために必要な動きや設定を指示したデータです。造形ツールパスデータは、3Dプリンターの造形方式によって異なります。代表的な造形方式には、以下のようなものがあります。

  • 光造形方式
  • FDM方式(熱溶解積層方式)
  • SLS方式(粉末焼結方式)
  • インクジェット方式

ここでは、最も一般的なFDM方式を例にして説明します。

FDM方式とは、熱で溶かした樹脂を積層して物体を作る方法です。FDM方式では、造形ツールパスデータはGコードという形式で作られます。Gコードとは、数値制御機械(NC)やコンピュータ数値制御機械(CNC)で使われるプログラム言語です。Gコードでは、X,Y,Z軸の座標や温度や速度などを指定して、ノズルの動きや樹脂の吐出量などを制御します。

Gコードを作るには、スライサーと呼ばれるソフトウェアを使います。スライサーとは、STLデータを薄い層に分割してGコードに変換するソフトウェアです。スライサーでは、層の厚さや埋め方やサポート材の有無などの設定を行います。代表的なスライサーには、CuraやSlic3rなどがあります。

④造形ツールパスデータの送信と造形

Gコードを作ったら、最後に3Dプリンターに送信して造形します。Gコードを送信する方法には、以下のようなものがあります。

  • USBケーブルで直接接続する
  • SDカードやUSBメモリなどに保存して挿入する
  • Wi-Fiやクラウド経由で無線で送信する

送信方法は、3Dプリンターの機種や仕様によって異なります。送信したら、3DプリンターがGコードに従って物体を造り始めます。このとき、3Dプリンターの状態や温度などを確認しながら監視しましょう。造形が終わったら、サポート材や余分な部分を取り除いて完成です。

2. 3Dプリンターの主な造形方式

3Dプリンターの主な造形方式

 ①光造形方式

光造形方式とは、液体状の光硬化性樹脂に紫外線レーザーなどの光を照射して硬化させる方法です。光硬化性樹脂とは、紫外線など特定の波長の光によって硬化する樹脂のことです。樹脂の分子が重合することによって、液体から個体に変化する性質を利用しています。

光造形方式のメリットは、高精細で滑らかな表面の造形物を作成できることです。また、透明や半透明な造形物も作れるため、美術品やジュエリーなどの審美性が求められる用途に適しています。さらに、レーザーを使わずにDLP(デジタルライトプロセッシング)というプロジェクターを使う方法もあります。これは、一度に一層分を光で固めることができるため、造形速度が速くなります。

光造形方式のデメリットは、光硬化性樹脂が太陽光や空気中の酸素によって劣化しやすいことです。これは、造形物の強度や色が変わったり、ひび割れや変形が起きたりする原因になります。また、液体状の樹脂を扱うため、洗浄や除去などの後処理が必要になります。さらに、樹脂自体が高価であったり、特殊な容器や設備が必要だったりする場合もあります。

光造形方式で使われる光硬化性樹脂には、以下のような種類があります。

  • 熱可塑性樹脂ライク:ABSやポリカーボネートなどの熱可塑性樹脂に似た特性を持つ樹脂です。強度や耐熱性が高く、試作品や治具などに使われます。
  • セラミック:セラミック粒子を含んだ樹脂です。焼成後にセラミック製品と同等の特性を持ちます。耐摩耗性や耐薬品性が高く、歯科用途や装飾品などに使われます。
  • ワックス:ワックス粒子を含んだ樹脂です。溶解後にロストワックス法という方法で金属製品を作ることができます。精密鋳造用途やジュエリー用途に使われます。

②FDM方式(熱溶解積層方式)

FDM方式とは、熱で溶かした樹脂をノズルから押し出し、積層して物体を作る方法です。FDMとはFused Deposition Modelingの略で、Stratasys社の商標です。他にもMEX(Material Extrusion)やFFF(Fused Filament Fabrication)などと呼ばれることもあります。

FDM方式のメリットは、扱いやすく安価なことです。樹脂はフィラメントと呼ばれる線状の形でリールに巻かれており、ノズルに通して加熱するだけで使えます。また、様々な種類の樹脂があり、カラーバリエーションも豊富です。さらに、サポート材と呼ばれる造形物を支える材料も同じノズルから押し出せるため、複雑な形状の造形物も作れます。

FDM方式のデメリットは、精度や表面状態が低いことです。樹脂を溶かして積層するため、断面に段差ができやすく、滑らかさが失われます。また、温度管理が難しく、冷却による収縮や歪みが起きやすいこともあります。さらに、強度や耐久性が低く、太陽光や湿気に弱い場合もあります。

FDM方式で使われる樹脂には、以下のような種類があります。

  • ABS:アクリロニトリル・ブタジエン・スチレンの略で、プラスチック製品によく使われる樹脂です。強度や耐熱性が高く、試作品や治具などに使われます。
  • PLA:ポリ乳酸の略で、トウモロコシなどの植物由来の生分解性樹脂です。ABSよりも加工しやすく、色や透明度も豊富です。模型や装飾品などに使われます。
  • PC:ポリカーボネートの略で、耐衝撃性や耐熱性が非常に高い樹脂です。自動車や航空機などの部品に使われます。
  • PPSU:ポリフェニレンスルフォンの略で、耐熱性や耐薬品性が極めて高い樹脂です。医療用途や食品用途に使われます。

③SLS方式(粉末焼結方式)

SLS方式とは、レーザー光を粉末床上の特定箇所に照射して粉末を焼結させる方法です。SLSとはSelective Laser Sinteringの略で、選択的レーザー焼結と訳されます。粉末床とは、造形材料となる粉末を平らに敷き詰めたものです。

SLS方式のメリットは、強度や耐久性が高いことです。粉末をレーザーで直接焼結するため、造形物は均一で密度が高くなります。また、サポート材が不要であるため、複雑な形状や内部構造の造形物も作れます。さらに、粉末床が造形物を支えるため、重力や熱応力の影響を受けにくくなります。

SLS方式のデメリットは、造形速度が遅いことです。レーザー光を点状に照射するため、一層分の造形に時間がかかります。また、高温で焼結するため、冷却時間も長くなります。さらに、粉末床が高温になるため、樹脂の劣化や色変化が起きやすいこともあります。

SLS方式で使われる粉末には、以下のような種類があります。

  • ナイロン:ポリアミドとも呼ばれる合成樹脂です。強度や耐摩耗性が高く、柔軟性や耐衝撃性も持ちます。試作品や機能部品などに使われます。
  • ポリプロピレン:ポリオレフィンの一種である合成樹脂です。軽量で耐水性や耐薬品性が高く、電気絶縁性も持ちます。容器やパイプなどに使われます。
  • アルミニウム:金属の一種です。軽量で強度や導電性が高く、耐食性も持ちます。自動車や航空機などの部品に使われます。
  • ステンレス鋼:鉄とクロムなどの合金です。強度や耐熱性が高く、錆びにくい特徴があります。工業用途や医療用途に使われます。

④インクジェット方式

インクジェット方式とは、インクジェットプリンターと同じ原理で液体状の樹脂や粘土状の材料をノズルから吹き出して積層する方法です。インクジェットプリンターとは、紙にインクを噴射して文字や画像を印刷する装置です。

インクジェット方式のメリットは、カラフルな造形物を作れることです。インクジェットプリンターと同じように、CMYK(シアン・マゼンタ・イエロー・ブラック)の4色の樹脂を混ぜて色を表現できます。また、粘土状の材料を使う場合は、焼成後に陶器や磁器のような質感の造形物を作れます。さらに、樹脂や粘土以外にも、紙やチョコレートなどの材料も使える場合があります。

インクジェット方式のデメリットは、精度や強度が低いことです。液体状や粘土状の材料を吹き出すため、造形物の形が崩れやすくなります。また、樹脂を硬化させるために紫外線や熱を加える必要がある場合もあります。さらに、ノズルの詰まりや乾燥などのトラブルが起きやすいこともあります。

インクジェット方式で使われる材料には、以下のような種類があります。

  • 光硬化性樹脂:光造形方式と同じ樹脂です。紫外線によって硬化します。カラフルな造形物を作れます。
  • 粘土:水分と粘土粒子からなる材料です。焼成後に硬化します。陶器や磁器のような造形物を作れます。
  • :木材や植物から作られた薄いシート状の材料です。接着剤で貼り合わせて積層します。紙製品やパッケージなどに使われます。
  • チョコレート:カカオ豆から作られた食用の材料です。溶かして吹き出し、冷却後に硬化します。チョコレート製品や菓子などに使われます。

おわりに

3Dプリンターは、様々な材料や方式を使って、想像力豊かな物体を作り出すことができます。しかし、その仕組みや種類を理解することで、より効果的に活用することができます。この記事では、3Dプリンターの基本的な仕組みと主な造形方式について、わかりやすく解説しました。ぜひ参考にしてみてください。

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