モラハラは夫婦間の問題としても深刻で、離婚の原因になることも少なくありません。
しかし、モラハラは治療可能なものです。
専門家の助けを借りて、モラハラの原因や影響を理解し、夫婦関係を改善する方法を見つけることができます。
この記事では、モラハラの原因と心理とモラハラの治療法について詳しく解説します。
1.モラハラの原因と心理
ここでは、モラハラと呼ばれる精神的ないやがらせの原因と心理について、詳しく解説していきたいと思います。
モラハラを受けているかもしれないと感じたり、自分が加害者になっているかもしれないと不安に思ったりする方は、ぜひ参考にしてください。
①モラハラ加害者の特徴と背景
まず、モラハラ加害者の特徴と背景について見ていきましょう。
モラハラ加害者とは、言動や態度によって相手の自尊心や人格を否定したり、精神的な圧力をかけたりする人のことです。
モラハラ加害者の特徴
- 自分が優位に立ちたいという欲求が強く、他人を見下したり支配したりすることで優越感を得る
- 自分の考えや価値観を絶対視し、相手の意見や感情を無視したり否定したりする
- 自分の非や欠点に気づかないか、認めようとしないか、責任を他人に転嫁する
- 嘘やごまかしを平気で使い、自分の利益や保身のために他人を利用する
- 感情的に不安定であり、些細なことで怒ったり泣いたりする
- 人前では良い顔をし、被害者に対しては密かにいやがらせをする
モラハラ加害者の心理的な背景
- 自己肯定感が低く、自分を否定することで自尊心を保とうとする
- 他人から認められたいという欲求が強く、自分を過大評価することで自信を持とうとする
- 精神的なコントロール力が弱く、自分の感情や衝動を抑えることができない
- 対人関係における信頼や共感が不足しており、他人の気持ちや立場に配慮することができない
- 子ども時代に親から愛情や教育を受けられなかったり、虐待や暴力を受けたりした経験がある
社会的・文化的な要因
- 男性は強くあるべきだという男尊女卑の価値観や役割分担が残っており、女性に対して暴力的・支配的になりやすい
- 職場では上下関係や権力関係が強く存在し、部下や同僚に対して暴力的・支配的になりやすい
- 日本社会では自己主張や感情表現が抑制されがちであり、ストレスや不満を他人にぶつけることで解消しようとする
モラハラ加害者は、自分の心理的な問題や社会的な問題を解決するために、他人を傷つけることで自分を正当化しようとするのです。
②モラハラ被害者の特徴と対処法
次に、モラハラ被害者の特徴と対処法について見ていきましょう。
モラハラ被害者とは、モラハラ加害者から言動や態度によるいやがらせを受けて、心身に悪影響を受ける人のことです。
モラハラ被害者の特徴
- 自己肯定感が低く、自分を否定することで自尊心を保とうとする
- 他人から認められたいという欲求が強く、自分を過小評価することで自信を失う
- 精神的なコントロール力が弱く、自分の感情や衝動を抑えることができない
- 対人関係における信頼や共感が不足しており、他人の気持ちや立場に配慮することができない
- 子ども時代に親から愛情や教育を受けられなかったり、虐待や暴力を受けたりした経験がある
これらの特徴は、モラハラ加害者の特徴と似ていますが、その方向性が逆になっています。
つまり、モラハラ被害者は、自分の心理的な問題や社会的な問題を解決するために、他人に傷つけられることで自分を正当化しようとするのです。
このようにして、モラハラ加害者と被害者は相互に依存する関係に陥ってしまいます。
モラハラ被害者の心身の症状
- 不安や恐怖、怒りや悲しみなどの強い感情
- 無気力や無関心、自己否定や劣等感などの抑うつ的な気分
- 睡眠障害や食欲不振、頭痛や胃痛などの身体的不調
- 自傷行為や自殺企図などの危険な行動
心身の症状の対処法
- モラハラ加害者から距離を置く。可能であれば関係を断ち切る。
- モラハラ加害者の言動や態度に惑わされず、自分の気持ちや価値観を大切にする。
- モラハラ加害者に対して反論したり抵抗したりしない。無視したり冷静に対応したりする。
- モラハラの被害を証拠として記録する。メールやチャットの履歴、録音や録画などを保存する。
- モラハラの被害を信頼できる人に相談する。家族や友人、同僚や上司、専門家や相談機関などに話すことで、心の支えや助言を得る。
- モラハラの被害を法的に解決する。弁護士や労働基準監督署などに相談し、損害賠償や解雇などの救済措置を求める。
- モラハラの被害から回復する。心療内科やカウンセリングなどで精神的な治療を受けることで、トラウマやストレスを解消する。
2.モラハラの治療法とその種類
モラハラによって心の傷を負った人は、自分を守るために感情を抑え込んだり、人間関係を避けたりするようになりますが、これはさらに孤立感や無力感を増幅させることになります。
そこで、モラハラから回復するためには、専門家の助けを受けて、心のケアを行うことが必要です。ここでは、モラハラの治療法とその種類について紹介します。
①カウンセリング
カウンセリングとは、心理カウンセラーや臨床心理士などの専門家が、モラハラの被害者と一対一で話し合い、その人の心の状態や悩みを理解し、適切なアドバイスや支援を行うことです。
カウンセリングでは、以下のような効果が期待できます。
- モラハラの被害者は、自分の気持ちや考え方を話すことで、ストレスや苦しみを軽減することができます。
- カウンセラーは、モラハラの被害者に寄り添い、共感や肯定を示すことで、その人の自己肯定感や自尊心を高めることができます。
- カウンセラーは、モラハラの被害者に対して、客観的かつ現実的な視点から指導や援助を行うことで、その人が自分の問題を解決するための方法や方向性を見つけることができます。
- カウンセリングは、モラハラの被害者が自分の力で立ち直っていくきっかけを作ったり、気持ちや考え方を整理していくサポートを行ったりするものです。カウンセリングでは、どうしたらよいかのアドバイスを受けたり、答えを出してもらったりするものではありません。
カウンセリングは、個人カウンセリングとグループカウンセリングに分けられます。
個人カウンセリングでは、カウンセラーと二人きりで話すことができるため、プライバシーが保たれます。
グループカウンセリングでは、同じような経験や悩みを持つ人たちと話すことができるため、孤立感や理解されない感じを減らすことができます。
どちらのカウンセリングもメリットがありますが、自分に合った形式を選ぶことが大切です。
②認知行動療法
認知行動療法とは、物事の受け取り方や考え方(認知)や行動に働きかけて、心の病を治療する心理療法の一種です。
認知行動療法では、以下のような効果が期待できます。
- モラハラの被害者は、自分の認知に歪みがあることに気づき、それを修正することで、ネガティブな感情や思考を減らすことができます。
- モラハラの被害者は、自分の行動に変化を加えることで、自信やコントロール感覚を取り戻し、人との関わりや生活の質を改善することができます。
- 認知行動療法は、モラハラの被害者に対して、具体的な指示や宿題を与えることで、その人が自分の問題に積極的に取り組むことを促します。認知行動療法では、カウンセラーが一方的に教えるものではなく、その人が自分で気づきや解決策を見つけるものです。
認知行動療法は、個人認知行動療法とグループ認知行動療法に分けられます。
個人認知行動療法では、カウンセラーと一対一で話しながら、自分の認知や行動について分析し、改善する方法を学びます。
グループ認知行動療法では、同じような課題や目標を持つ人たちと一緒に話しながら、お互いに励ましやフィードバックを与えることで、学習効果を高めます。
どちらの認知行動療法もメリットがありますが、自分に合った形式を選ぶことが大切です。
③グループセラピー
グループセラピーとは、複数のクライエントが集まって行われる心理療法のことです。グループセラピーでは、以下のような効果が期待できます。
- モラハラの被害者は、他のメンバーから話を聞いたり話したりすることで、自分だけではないという安心感や希望感を得ることができます。
- モラハラの被害者は、他のメンバーから共感や支持を受けたり与えたりすることで、自分の価値観や感情表現を再確認することができます。
- モラハラの被害者は、他のメンバーからアドバイスやモデルを得たり提供したりすることで、新しい考え方や行動パターンを学ぶことができます。
- グループセラピーは、モラハラの被害者に対して、集団内で起こるさまざまな相互作用や集団力動によって、態度変容や問題解決を促します。グループセラピーでは、カウンセラーが集団全体を管理し導く役割を果たしますが、メンバー同士の関係性も重要です。
グループセラピーは、さまざまな種類があります。
例えば、同じモラハラの被害者同士が集まる自助グループ、カウンセラーがテーマや目標を設定する教育的グループ、カウンセラーがメンバーの感情や関係性に焦点を当てる対人的グループなどがあります。
どの種類のグループセラピーもメリットがありますが、自分に合った形式を選ぶことが大切です。
3.モラハラを防止するためにできること
夫婦間のモラハラは、長期間にわたって受け続けると、被害者の自己肯定感や自尊心を低下させ、うつ病や自殺などの重大なリスクにつながる可能性があります。
そこで、ここでは、夫婦間のモラハラを防止するためにできることを紹介します。 以下の3つのポイントについて解説します。
①自分自身の心と体を大切にすること
夫婦間のモラハラは、被害者が相手の言動に影響されてしまうことで悪化します。
そのため、自分自身の心と体を大切にすることが、モラハラから守る第一歩です。
自分自身の心と体を大切にするためには、以下のような方法があります。
- 自分の欲求や感情を認めてあげる
- 自分の価値や強みを見つけて肯定する
- 自分に優しく励ましや褒め言葉をかける
- 自分の体調や健康状態に気を配る
- 自分の好きなことや楽しいことをする
- 自分のための時間や空間を作る
- 新しいことに挑戦してみる
これらの方法は、自分自身を大切にする実践的な方法です。 自分自身を大切にすることで、心に余裕が生まれ、相手の言動に振り回されなくなります。
また、自信や幸福感が高まり、ポジティブな気持ちで生活できます。
②夫婦間のコミュニケーションを改善すること
夫婦間のモラハラは、コミュニケーション不足や認識のずれが原因で起こる場合もあります。
そのため、夫婦間のコミュニケーションを改善することが、モラハラを防止するために重要です。
夫婦間のコミュニケーションを改善するためには、以下のようなポイントがあります。
- 毎日あいさつや感謝の言葉を伝える
- 相手の状況や気持ちを考えて尊敬や配慮を示す
- 相手の話に興味を持って聞き、共感や理解を表す
- 相手に対して批判や非難ではなく、希望や要望を伝える
- 相手の意見や考え方を尊重し、受け入れる
- 相手の良いところや努力を認めて褒める
- 互いに楽しめる会話や活動をする
これらのポイントは、夫婦間のコミュニケーションを円滑にするための基本的なマナーです。
夫婦間のコミュニケーションを改善することで、信頼や親密感が深まり、互いに尊重し合える関係になります。
また、相手の本当の気持ちや考え方を知ることで、誤解やすれ違いを防ぐことができます。
③第三者の支援や相談を利用すること
夫婦間のモラハラは、自分だけで解決しようとすると、なかなか改善されない場合があります。
そのため、第三者の支援や相談を利用することが、モラハラを防止するために有効です。
第三者の支援や相談を利用することで、以下のようなメリットがあります。
- 客観的な視点や専門的な知識を得ることができる
- 自分の気持ちや悩みを吐き出すことができる
- 解決策やアドバイスをもらうことができる
- 必要に応じて法的な手続きや保護措置を受けることができる
第三者の支援や相談を利用できる機関は、以下のようなものがあります。
- 地域包括支援センター:高齢者に関する様々な相談や支援を行う窓口です。 モラハラに関しては、権利擁護業務として虐待防止や金銭管理のサポートなどを行います。
- 女性相談支援センター:女性に関する様々な相談や支援を行う窓口です。 モラハラに関しては、カウンセリングや法律相談、シェルターの紹介などを行います。
- 成年後見制度:判断能力が不十分な人に対して、財産管理や生活支援を行う制度です。 モラハラに関しては、被害者の意思に沿って契約や代理訴訟などを行います。
これらの機関は、無料で相談できる場合が多く、秘密も守られます。
また、第三者からの相談も受け付けています。 モラハラに悩んでいる人やその周囲の人は、気軽に相談してみましょう。
おわりに
モラハラは、一人で抱え込まず、専門家の助けを借りて治療することが大切です。
自分に合った治療法を選び、無理をせずに治療を継続しましょう。
この記事では、モラハラの治療法とその選び方について解説しました。
モラハラを受けた方は、ぜひ参考にしてみてください。