最近、「アスパルテーム」が発がん性物質として分類される可能性が報じられました。
アスパルテームは、砂糖の代替品としてダイエット飲料や低カロリー食品、特に人気のあるコーラプラスなどにも使われています。
この記事では、この報道を背景に、アスパルテームとコーラの関係、そしてアスパルテームの発がん性の疑い、それに対する科学的な評価について解説します。
1.アスパルテームとは
アスパルテームは、アスパラギン酸とフェニルアラニンという2つのアミノ酸から合成される甘味料です。
化学的には「L-アスパルチル-L-フェニルアラニンメチルエステル」と呼ばれていますが、一般的にはアスパルテームと呼ばれています。
アスパルテームの主な特徴は、その強力な甘味と低カロリー性です。実際、アスパルテームの甘味は、砂糖の約200倍もの強さを持っています。
これにより、少量のアスパルテームで十分な甘味を得ることができます。
また、アスパルテームのカロリーは非常に低いため、ダイエットや糖尿病管理などの健康上の理由から利用されることがあります。
アスパルテームは、加熱にも安定しており、多くの飲料や食品に使用されています。
これは、アスパルテームが熱によって分解せず、甘味を失うことがないためです。
そのため、アスパルテームは炊飯や焼き菓子などの高温処理が必要な食品にも適しています。
代表的な例としては、ソフトドリンク（コーラや炭酸飲料）、スポーツドリンク、フレーバードウォーター、食品の調味料やデザートなどがあります。
これらの製品では、アスパルテームの甘味が使用され、低カロリーで甘い味わいが実現されています。
2.コカ・コーラとアスパルテーム
コカ・コーラは世界的に有名な炭酸飲料であり、そのバリエーションの中にはさまざまな種類があります。
その中でも、現在アスパルテーム使用されている製品は、コカ・コーラプラスだけです。
コカ・コーラ プラスは、糖類ゼロ、カロリーゼロで、食事から摂取した脂肪の吸収を抑え、食後の血中中性脂肪の上昇をおだやかにする効果があります。
そのため、健康に気遣っている人や、カロリーや糖類を気にしている人に人気があります。
また、コカ・コーラの味はそのままに、特定保健用食品に認可されているので、特定保健用食品に興味がある人や、新しいものを試してみたい人にも人気があります。
3.アスパルテームに発がん性？国際がん研究機関（IARC）って何？
①国際がん研究機関（IARC）の目的と機能
がんは、世界中の人々の健康に大きな影響を与える病気です。
その予防や早期発見に関する研究を推進するため、さまざまな機関が活動しています。
その中の一つが、国際がん研究機関（IARC）です。ここでは、IARCの目的とその機能について簡単に説明します。
IARCの目的
IARCは、世界保健機関（WHO）の専門機関として1965年に設立されました。
その主な目的は、がんの発生、進行、死亡の要因を明らかにし、これらの知見をもとにがん予防策を策定することです。
この目的を達成するために、IARCは全世界的な視点から疫学的ながんの研究を行っています。
これには、がんの原因や生物学的メカニズム、がんの発生率や死亡率の統計解析などが含まれます。
IARCの機能
IARCの主な機能は以下のとおりです。
がんリスクの評価：IARCは、さまざまな化学物質、生物、物理的要素、職業環境、生活様式ががんのリスクにどのように影響するかを評価します。
その評価結果は、「モノグラフ」と呼ばれる公開文書として発行され、全世界に共有されます。
がんの監視と情報の共有：IARCは、世界中のがんの発生率、死亡率、生存率の統計データを集め、解析し、公開します。
これにより、がんのパターンを理解し、予防策の効果を評価することが可能になります。
がん研究の促進：IARCは、がん研究に関するさまざまなトレーニングプログラムを提供し、研究者や医療専門家の能力を強化します。
これにより、世界各地でのがん研究と予防活動が推進されます。
以上のように、IARCは世界中のがん研究をリードする役割を担っており、その活動は我々の生活や健康に対する理解を深めるのに貢献しています。また、その研究成果は、がん予防や早期発見のための政策策定に大きな影響を与えています。
②アスパルテームと発がん性に関するIARCの評価
2023年6月、世界保健機関（WHO）の下部組織である国際がん研究機関（IARC）は、アスパルテームを発がん性がある可能性がある「ヒトに対して発がん性がある可能性がある（2B類）」に分類しました。
これは、IARCがこれまでに分類した物質の中では、最もリスクが低い分類です。
2B類には、他にわらび、漬けものなどが分類されています。
一部のコーヒーも一時期2Bに分類されましたが、その後のレビューで発がん性リスクがないとされ、該当から外されました。
IARCの分類は、動物実験の結果に基づいています。
動物実験では、アスパルテームを大量に摂取した動物に、脳腫瘍や白血病などの発がんがみられました。
しかし、これらの動物実験は、人間に当てはまるとは限りません。
また、IARCの分類は、疫学調査の結果も考慮しています。
疫学調査とは、特定の物質を摂取した人と摂取していない人の間の発がんリスクを比較する調査です。
これまでの疫学調査では、アスパルテームと発がんの関連は認められていません。
一方、FAO/WHO合同食品添加物専門家会議（JECFA）は、アスパルテームの許容一日摂取量（ADI）を変更せず、40ミリグラム（mg）/キログラム（kg）体重/日のままとする、と明らかにしました。
IARCの発がん性分類は、様々な要因（化学物質、微生物、作業環境や特定の行為等）について、ヒトに対する発がんの原因となり得るかどうかの根拠の強さを示すものです。
この分類は、各要因の発がん性の強さを示すものではありません。また、各要因に現実的なレベルでばく露したときに実際にがんが発生する可能性の大きさを示すものではありません。
詳しい情報はこちらからご覧いただけます：[食品安全委員会 – アスパルテームに関するQ&A]
これらのことから、アスパルテームの発がん性は低いと考えられます。しかし、アスパルテームを大量に摂取することは避けたほうがよいでしょう。
③WHOやFDAなどの機関による安全性の評価
アスパルテームの安全性については、世界保健機関（WHO）、米国食品医薬品局（FDA）などの信頼できる機関による評価が行われています。
WHOは、国際的な公衆衛生に関する問題に対する指針を提供する組織です。アスパルテームの安全性に関して、WHOは定期的に評価を行っています。
WHOの評価によると、アスパルテームは一般的な摂取量であれば安全であり、許容摂取量内での使用は一般的には問題ありません。
また、WHOはアスパルテームに関するデータの収集やリスク評価を継続的に行っており、最新の科学的知見を反映しています。
FDAは、米国における食品および医薬品の安全性と規制を管理する機関です。
アスパルテームについてもFDAは継続的な安全性評価を行っています。
FDAはアスパルテームを安全な甘味料として認めており、アスパルテームが使用される飲料や食品に関しても規制を設けています。
また、FDAはアスパルテームの安全性についての情報を消費者に提供しており、正確なラベル表示を求めるなどの取り組みも行っています。
これらの機関による安全性の評価は、多くの科学的なデータと研究に基づいています。
アスパルテームの安全性に関する評価は、動物実験や人間の摂取試験、流行病学調査など、幅広いアプローチによって行われます。
これらの評価は、アスパルテームの許容摂取量や使用基準を策定するために重要な役割を果たしています。
信頼できる機関による安全性の評価は、アスパルテームを含む製品を選ぶ際に参考にするべき情報源です。
また、正確なラベル表示や許容摂取量の守り方にも留意することが重要です。自身の健康状態や摂取量に合わせて、バランスの取れた食生活を実践しましょう。
4.アスパルテーム入りコーラ（コカ・コーラプラス）を摂取する人への注意点
アスパルテーム入りコーラ（コカ・コーラプラス）を摂取する際には、摂取量の制限やラベル表示の確認が重要です。
適切な摂取量は個人の体重や健康状態によって異なるため、医師や栄養士と相談することをおすすめします。
また、アスパルテーム入りコーラ以外の健康的な飲料の選択肢も検討しましょう。
「アスパルテーム入りコーラの摂取量の制限」
アスパルテーム入りコーラの摂取量には、信頼できる機関が出しているデータやガイドラインを参考にすることが推奨されます。
以下に、主要な機関からのデータと制限の目安をご紹介します。
アメリカ食品医薬品局（FDA）：FDAはアスパルテームを安全な甘味料として認めています。
FDAの許容摂取量（ADI）は体重1キログラム当たり50ミリグラムとされており、一般的な人々にとっては摂取リスクが低い範囲とされています。
世界保健機関（WHO）：WHOはアスパルテームの許容摂取量を体重1キログラム当たり40ミリグラムと定めています。
これはFDAの許容摂取量よりもわずかに低いですが、同様に一般的な人々にとっては低リスクとされています。
これらのデータやガイドラインから分かるように、アスパルテーム入りコーラの摂取量は制限があります。
体重に応じて計算される許容摂取量を参考にし、適切な範囲内での摂取を心掛けましょう。
また、個人の健康状態や特定の疾患を抱えている場合は、医師や栄養士と相談することが重要です。
特に、フェニルケトン尿症やメタノールへの過敏症などの特定の遺伝子変異や疾患を持っている場合は、アスパルテームの摂取を避ける必要があります。
アスパルテーム入りコーラの摂取量を制限するためには、以下のポイントに注意することが有効です。
ラベル表示の確認：アスパルテーム入りコーラのラベルには、アスパルテームの含有量が表示されています。ラベルを確認し、許容摂取量に対して適切な範囲内での摂取を心掛けましょう。
バランスの取れた食事：アスパルテーム入りコーラを含む飲料は、バランスの取れた食事と一緒に摂ることが重要です。栄養バランスを考慮し、健康的な食事習慣を実践しましょう。
多様な飲料の選択：アスパルテーム入りコーラだけでなく、他の健康的な飲料も適切に摂取することが重要です。水やハーブティー、自然の甘味料を使用した飲料など、選択肢を多様化させましょう。
まとめ
アスパルテームは、コカ・コーラプラス等の低カロリー飲料に使われる甘味料で、国際がん研究機関（IARC）により発がん性への懸念が指摘されています。
しかし、世界保健機関（WHO）、アメリカ食品医薬品局（FDA）による評価では、明確ながんリスク増加の証拠は見つかっていません。
それでも過剰な摂取には注意が必要で、摂取量管理が推奨されています。
