クリケットと聞いて、あなたはどんなイメージを持ちますか?
イギリス発祥の紳士的なスポーツであることは知っているかもしれませんが、実は世界で最も人気のあるスポーツの一つであり、競技人口は3億人を超えています。
この記事では、クリケットの魅力と世界的な競技人口の実態について紹介します。
1.クリケットとはどんなスポーツか
クリケットとは、バットとボールを使って2チームが対戦するスポーツです。
イギリス発祥で、現在は世界中で親しまれています。クリケットの歴史やルール、用具やフィールド、試合形式や大会について、初心者にも分かりやすく解説します。
①クリケットの歴史とルール
クリケットの起源は定かではありませんが、16世紀頃にイギリス南東部で発展したと考えられています。
当時は羊の毛を巻いた木の棒と木の板を使って遊んでいたそうです。
18世紀になると、クリケットはイギリスの国民的スポーツとなり、ルールや組織も整備されました。
19世紀にはイギリスの植民地にも広まり、オーストラリアやインドなどで人気を博しました。
クリケットの基本的なルールは以下の通りです。
- クリケットは2チーム(各11人)が交互に攻撃(バッティング)と守備(ボウリング)を行う。
- 攻撃側は2人のバッツマンがフィールド上に立ち、守備側は1人のボウラーと10人のフィールダーが配置される。
- ボウラーはボールを投げてバッツマンの背後にある3本の木の棒(ウィケット)を倒そうとする。
- バッツマンはバットでボールを打ち返して得点(ラン)を稼ごうとする。
- バッツマンはボールを打った後、フィールド上にあるもう一組のウィケットまで走って戻ることで1ランを得る。ボールがフィールドの境界線を越えた場合は4ランまたは6ランとなる。
- 守備側はバッツマンをアウトにすることで攻撃権を奪おうとする。アウトになる方法は以下の通り。
- バッツマンがボールを打ってもウィケットが倒れる(ボウルド)
- バッツマンがボールを打った後、フィールダーが空中でキャッチする(キャウト)
- バッツマンが走っている間にウィケットが倒される(ランアウト)
- バッツマンがバットや身体でウィケットを守ろうとしてボールに触れる(レグビフォーウィケット)
- バッツマンがバットや身体でボールに触れずにウィケットキーパー(守備側の捕手)に捕らえられる(ストンプド)
- その他のルール違反(オビストラクティング・ザ・フィールド、タイムアウト、ハンドル・ザ・ボールなど)
- 攻撃側は10人のバッツマンがアウトになるか、一定数の投球(オーバー)が終わるまで攻撃を続ける。
- 両チームが攻撃と守備を1回または2回ずつ行った後、得点の多いチームが勝者となる。
②クリケットの用具とフィールド
クリケットに必要な用具は以下の通りです。
- ボール:硬いコルクに革を巻いたもので、重さは155.9g~163g、直径は7.11cm~7.26cmです。色は赤または白で、表面に縫い目があります。
- バット:木製の平たい棒で、長さは96.5cm以下、幅は10.8cm以下です。ハンドル部分にはゴムや布などで巻かれています。
- ウィケット:3本の木の棒(スタンプ)と2枚の木の板(ベイル)で構成されます。スタンプは高さ71.1cm、間隔9cmで地面に刺さっており、その上にベイルが乗っています。フィールド上に2組あります。
- パッド:バッツマンやウィケットキーパーが脚につける保護具です。ボールから衝撃を和らげます。
- グローブ:バッツマンやウィケットキーパーが手につける保護具です。ボールから傷や打撲を防ぎます。
- ヘルメット:バッツマンやウィケットキーパーが頭につける保護具です。ボールから頭部を守ります。
- プロテクター:バッツマンやウィケットキーパーが下半身につける保護具です。ボールから生殖器を守ります。
クリケットのフィールドは以下の通りです。
- フィールド:楕円形または円形の芝生で、直径は137m~150mです。中央にはピッチと呼ばれる長方形の土の帯があります。
- ピッチ:長さ20.12m、幅3.05mの土の帯で、両端にウィケットが設置されています。ピッチ上にはポップ・クリースと呼ばれる白線が引かれており、バッツマンやボウラーの位置を示します。
- バウンダリー:フィールドの境界線で、ロープやフェンスなどで区切られています。ボールがバウンダリーを越えると得点となります。
③クリケットの試合形式と大会
クリケットには主に以下の3種類の試合形式があります。
- テストマッチ:最も古くから行われている形式で、両チームがそれぞれ2回ずつ攻撃と守備を行います。1回の攻撃は10人のバッツマンがアウトになるか無制限のオーバーが終わるまで続きます。試合期間は最大5日間です。テストマッチは国際クリケット評議会(ICC)に加盟する12カ国(イングランド、オーストラリア、南アフリカ、西インド諸島、ニュージーランド、インド、パキスタン、スリランカ、ジンバブエ、バングラデデシュ、アイルランド、アフガニスタン)が参加できます。テストマッチの代表的な大会は、イングランドとオーストラリアが争う灰の戦いです。
- ワンデイ・インターナショナル(ODI):1日で終わる形式で、両チームがそれぞれ50オーバー以内で攻撃と守備を行います。1回の攻撃は10人のバッツマンがアウトになるか50オーバーが終わるまで続きます。試合時間は約8時間です。ODIはICCに加盟する20カ国(テストマッチ参加国に加えて、ケニア、カナダ、オランダ、スコットランド、ネパール、UAEなど)が参加できます。ODIの代表的な大会は、4年に1度開催されるクリケット・ワールドカップです。
- トゥエンティ20(T20):最も新しい形式で、両チームがそれぞれ20オーバー以内で攻撃と守備を行います。1回の攻撃は10人のバッツマンがアウトになるか20オーバーが終わるまで続きます。試合時間は約3時間です。T20はICCに加盟する106カ国(ODI参加国に加えて、日本、香港、シンガポール、マレーシアなど)が参加できます。T20の代表的な大会は、2年に1度開催されるT20ワールドカップです。
これらの試合形式の違いは、攻撃回数やオーバー数だけでなく、戦略やスタイルにも影響します。テストマッチは長期間にわたって展開されるため、耐久力や粘り強さが求められます。
ODIは中距離のレースのように、バランスやペース配分が重要です。T20は短時間で決着がつくため、攻撃的でスピーディーなプレイが魅力です。
2.クリケットの競技人口ランキング
クリケットは世界で最も人気のあるスポーツの一つですが、その競技人口はどのくらいなのでしょうか?ここでは、クリケットの競技人口ランキングを紹介します。
競技人口とは、クリケットをプレイする人数や観戦する人数を指します。競技人口は国や地域によって大きく異なります。
クリケットの競技人口ランキングは、以下の2つの基準で作成しました。
①プレイヤー数ランキング
まずは、プレイヤー数ランキングを見てみましょう。以下は、ICCに加盟する各国の登録プレイヤー数の上位10カ国です。
順位 | 国名 | プレイヤー数 |
---|---|---|
1 | インド | 1億5000万人以上 |
2 | パキスタン | 約2000万人 |
3 | バングラデシュ | 約1500万人 |
4 | イギリス | 約20万人 |
5 | オーストラリア | 約10万人 |
6 | 南アフリカ | 約7万人 |
7 | スリランカ | 約6万人 |
8 | アフガニスタン | 約5万人 |
9 | 西インド諸島 | 約4万人 |
10 | アイルランド | 約3万人 |
このランキングから分かるように、インド亜大陸(インド、パキスタン、バングラデシュ)は圧倒的なプレイヤー数を誇ります。
インドだけで世界のクリケットプレイヤーの半分以上を占めています。これは、インド亜大陸でクリケットが非常に盛んであり、国民的なスポーツとして認知されていることが理由です。
また、インド亜大陸ではクリケットが社会的な結びつきやアイデンティティを形成する役割も果たしています。
一方で、クリケット発祥の地であるイギリスは4位にとどまっています。
これは、イギリスでは他のスポーツ(サッカー、ラグビーなど)との競合が激しく、クリケットが若者にとって魅力的な選択肢ではなくなっていることが理由です。
②視聴者数ランキング
次に、視聴者数ランキングを見てみましょう。以下は、2019年に開催されたクリケット・ワールドカップのテレビ視聴者数の上位10カ国です。
順位 | 国名 | 視聴者数 |
---|---|---|
1 | インド | 7億3000万人 |
2 | パキスタン | 2億1000万人 |
3 | バングラデシュ | 1億5000万人 |
4 | イギリス | 1億3000万人 |
5 | アフガニスタン | 3600万人 |
6 | オーストラリア | 2500万人 |
7 | 南アフリカ | 1900万人 |
8 | スリランカ | 1600万人 |
9 | 西インド諸島 | 1500万人 |
10 | ニュージーランド | 1300万人 |
このランキングから分かるように、インド亜大陸(インド、パキスタン、バングラデシュ)は圧倒的な視聴者数を誇ります。
インドだけで世界のクリケット視聴者の半分以上を占めています。これは、インド亜大陸でクリケットが非常に人気であり、テレビやインターネットで熱心に観戦されていることが理由です。
また、インド亜大陸ではクリケットが政治や文化とも密接に関係しており、国際的な影響力を持っています。
一方で、クリケット発祥の地であるイギリスは4位にとどまっています。
これは、イギリスではクリケットのテレビ放送が有料化されており、視聴者のアクセスが制限されていることが理由です。
3.クリケットがオリンピック種目にならない理由
クリケットは世界で最も人気のあるスポーツの一つですが、オリンピック種目になっていません。
なぜでしょうか?ここでは、クリケットがオリンピック種目にならない理由について紹介します。
クリケットがオリンピック種目にならない理由は、以下の3つのポイントにまとめられます。
①1900年パリ五輪で一度だけ実施されたが、その後採用されなかった経緯
クリケットは1900年パリ五輪で一度だけ正式種目として実施されました。しかし、この時の試合はあまり盛り上がりませんでした。
参加国はイギリスとフランスの2カ国だけであり、しかもイギリス代表は本格的なナショナルチームではなく、パリ在住のイギリス人クラブチームでした。
フランス代表もクリケット経験の少ない選手が多く、試合はイギリス代表が圧勝するという結果に終わりました。観客もほとんど集まらず、メダルも当時は授与されませんでした。
このように、クリケットはオリンピックでのデビューを完全に失敗しました。
その後、クリケットはオリンピック種目から外され、再び採用されることはありませんでした。
クリケットはオリンピックに適さないスポーツというイメージが定着しました。
その理由としては、以下のようなものが挙げられます。
- クリケットは試合時間が長すぎる。テストマッチは5日間にわたって行われることもあります。ワンデイやT20でも3時間以上かかることが多いです。オリンピックでは1日で多くの試合を消化する必要があります。
- クリケットは参加国が少なすぎる。現在、ICCに加盟する国は106カ国ですが、テストマッチを行える国は12カ国しかありません。ODIやT20でも強豪国は限られています。オリンピックでは多くの国や地域が参加できるスポーツが望まれます。
- クリケットはフィールドや用具が特殊すぎる。クリケットは楕円形のフィールドやウィケットという木製の装置を必要とします。これらは他のスポーツと共用できません。また、ボールやバットも専用のものを使います。これらはコストや手間がかかります。
②インドのクリケット協会がオリンピック委員会に加盟しないことへの反対
クリケットがオリンピック種目にならないもう一つの理由は、インドのクリケット協会がオリンピック委員会に加盟しないことへの反対です。
インドはクリケットの最大の市場であり、世界のクリケットファンやプレイヤーの半分以上を占めています。イ
ンドのクリケット協会はBCCIと呼ばれ、世界で最も裕福で強力なスポーツ組織の一つです。BCCIはインドのクリケットを独自に運営しており、オリンピック委員会に加盟していません。
BCCIはオリンピック委員会に加盟しないことで、以下のような利益を得ています。
- BCCIはオリンピック委員会の規則や介入に縛られない。BCCIは自分たちの都合に合わせて試合スケジュールや放映権料などを決めることができる。BCCIは自分たちの利益を最優先することができる。
- BCCIはオリンピック委員会に貢献しなくてもよい。BCCIはオリンピック委員会に加盟料や分配金などを支払う必要がない。BCCIは自分たちの収入を自分たちで使うことができる。
- BCCIはオリンピック委員会に影響力を持たせない。BCCIはオリンピック委員会に加盟することで、他のスポーツ団体と同等の立場になることを嫌っている。BCCIは自分たちがクリケット界のボスであることを認めさせることができる。
BCCIはこれらの利益を失うことを恐れて、オリンピック委員会に加盟することに反対しています。
BCCIはクリケットがオリンピック種目になることにも反対しています。
BCCIはクリケットがオリンピック種目になることで、以下のようなデメリットが生じると考えています。
- BCCIはオリンピック委員会の規則や介入に従わなければならない。BCCIはオリンピック期間中に他の試合を開催できなくなるかもしれない。BCCIはオリンピック委員会から放映権料や分配金などを受け取る可能性がある。
- BCCIはオリンピック委員会に貢献しなければならない。BCCIはオリンピック委員会に加盟料や分配金などを支払わなければならないかもしれない。BCCIは自分たちの収入を他のスポーツ団体と共有しなければならない可能性がある。
- BCCIはオリンピック委員会に影響力を持たせる。BCCIはオリンピック委員会に加盟することで、他のスポーツ団体と同等の立場になるかもしれない可能性がある。
- BCCIはクリケットの人気や質を低下させる。BCCIはオリンピックに参加することで、インドのクリケットファンやプレイヤーの関心やモチベーションを減らすかもしれない。BCCIはオリンピックに参加することで、インドのクリケットチームのパフォーマンスやランキングを落とす可能性がある。
BCCIはこれらのデメリットを避けるために、オリンピック委員会に加盟することに反対しています。
BCCIはクリケットがオリンピック種目になることにも反対しています。BCCIは自分たちの利益や権力を守ることを優先しています。
③2028年ロサンゼルス五輪での採用を目指す動き
クリケットがオリンピック種目にならない理由は、1900年パリ五輪での失敗とBCCIの反対です。
しかし、クリケットがオリンピック種目になることを望む声もあります。
特に、2028年ロサンゼルス五輪での採用を目指す動きがあります。
この動きは、以下のような理由で推進されています。
- クリケットはオリンピックに貢献できる。クリケットは世界で最も人気のあるスポーツの一つであり、多くの国や地域が参加できます。クリケットはオリンピックの視聴者数や収入を増やすことができます。クリケットはオリンピックの多様性や普及を促進することができます。
- クリケットがオリンピックから恩恵を受けられる。クリケットはオリンピックに参加することで、世界中に知名度や人気を広げることができます。クリケットはオリンピックに参加することで、新たな市場やスポンサーを獲得することができます。クリケットはオリンピックに参加することで、若い世代や女性にも魅力的なスポーツになることができます。
この動きは、ICCや他の国のクリケット協会、選手やファンなどから支持されています。
特に、アメリカ合衆国(USA)のクリケット協会は積極的に2028年ロサンゼルス五輪での採用を目指しています。
USAはクリケットの新興市場であり、多くの移民や若者がクリケットに関心を持っています。
USAは自国開催のオリンピックでクリケットを紹介することで、クリケットの発展に貢献したいと考えています。
4.日本でのクリケットの普及状況
日本にクリケットが伝わったのは明治時代といわれています。
当時、イギリスやオーストラリアなどの外国人が横浜や神戸などの港町でクリケットをプレイしていました。
日本人も外国人と一緒にクリケットを楽しんだり、観戦したりしていました。
特に横浜では、1876年に横浜公園が開園し、その中に平和野球場が作られました。平和野球場は日本初の野球場として有名ですが、実はクリケット場としても使われていました。
平和野球場は現在も残っており、国の重要文化財に指定されています。
平和野球場では現在も定期的にクリケットの試合やイベントが行われており、日本のクリケット発祥の地として大切にされています。
①日本クリケット協会の設立と活動
日本で公式なクリケット協会が結成されたのは1984年のことです。
それまでは個人やチーム単位でクリケットを楽しんでいましたが、国際大会への参加や普及活動を行うために必要だと考えられました。
日本クリケット協会(JCA)は国際クリケット評議会(ICC)に加盟し、日本代表チームや国内大会を運営しています。
JCAは以下のような活動を行っています。
- 日本代表チーム(男子、女子、U19)の強化・育成
- 日本クリケットリーグ(JCL)や女子日本プレミアリーグ(WJPL)などの国内大会の開催
- クリケットブラストやCrickeTryなどの初心者向けイベントや体験会の実施
- 学校や地域でのクリケット教室や普及活動の実施
- クリケット用具や施設の提供や整備
- コーチや審判などの人材育成や教育
JCAはこれらの活動を通して、日本でクリケットを楽しめる環境を作っています。
②日本でプレイしている人数と大会
日本でプレイしている人数は約3000人と推定されています。
そのうち約半分は日本人で、残りは外国人です。日本人のプレイヤーは主に大学や社会人のクラブチームに所属しています。
外国人のプレイヤーは主に在日外国人や留学生などで、自国でクリケットを経験した人が多いです。
日本で開催される主な大会は以下の通りです。
- 日本クリケットリーグ(JCL):日本における最高レベルのクリケットリーグです。1部から3部のリーグ戦を関東各地で4月から9月の間に合計110試合ほど行われます。10月には日本クリケットリーグの決勝戦が行われます。
- 女子日本プレミアリーグ(WJPL):女子クリケットの最高レベルの大会です。6チームが参加し、T20形式で争われます。2021年は5月から8月にかけて6試合が行われました。
- クリケットブラスト:初心者や子供向けのクリケットイベントです。T10形式で楽しくクリケットを体験できます。2021年は関東と関西でそれぞれ2回ずつ開催されました。
- CrickeTry:初心者や子供向けのクリケット体験会です。クリケットの基本的なルールや技術を学べます。2021年は関東と関西でそれぞれ1回ずつ開催されました。
まとめ
クリケットは世界で最も普及しているスポーツの一つであり、特にインド亜大陸では圧倒的な人気を誇ります。
しかし日本ではまだマイナーなスポーツです。
クリケットの魅力や競技人口の実態を知って、ぜひ一度試してみてください。