航空法とは、航空機の飛行や空港の管理など、航空に関する事項を規定した法律です。
この法律は、昭和27年に制定されて以来、何度も改正されてきましたが、最近では、新型コロナウイルス感染症の影響や脱炭素化の動きに対応するために、大きな改正が行われました。
この記事では、令和3年と令和4年に閣議決定された航空法の改正内容について、初心者にも分かりやすく解説します。
1.航空ネットワークの確保
航空ネットワークとは、航空機が飛行するルートや空港の配置など、航空交通を円滑に行うためのシステムです。
このシステムは、国内や国際的な経済活動や社会生活に欠かせないものですが、新型コロナウイルス感染症の影響で大きな打撃を受けています。
航空需要の減少や旅行制限により、航空会社や空港会社は経営危機に陥っており、航空ネットワークの維持が困難になっています。
そこで、政府は、令和3年と令和4年に閣議決定された航空法の改正において、航空ネットワークの確保を重要な課題と位置づけ、以下のような措置を講じることとしました。
①コロナ禍で苦境にある航空会社や空港会社を支援するための措置
- 航空会社や空港会社に対して、国や地方公共団体が資金援助や出資などを行うことができるようになりました 。これは、航空ネットワークの維持や回復に必要不可欠な事業者を支えるためのものです。
- 航空会社や空港会社が経営改善計画を策定し、その実施状況を報告することが義務付けられました 。これは、支援を受ける事業者に対して、経営効率化や競争力強化などの取り組みを促すためのものです。
②航空運送事業基盤強化方針と航空運送事業基盤強化計画の策定
- 国土交通大臣は、航空運送事業基盤強化方針を策定し、公表することとなりました 。この方針は、航空運送事業者が取り組むべき課題や目標を示すもので、コロナ禍からの回復や脱炭素化への対応などが盛り込まれています。
- 航空運送事業者は、国土交通大臣が策定した方針に基づいて、自らが実施する具体的な取り組みをまとめた航空運送事業基盤強化計画を作成し、国土交通大臣に提出することとなりました 。この計画は、国土交通大臣から認定を受けることで、支援措置の対象となることができます。
③空港使用料の減免や設備投資の促進
- 国土交通大臣は、航空運送事業者が支払う空港使用料(離着陸料や駐機料など)を一時的に減免することができるようになりました 。これは、航空運送事業者の負担を軽減するためのものです。
- 国土交通大臣は、空港の整備や拡張などの設備投資を促進するために、国や地方公共団体が行う空港事業に対して、補助金や融資などの支援を強化することができるようになりました 。これは、航空ネットワークの拡充や機能向上を図るためのものです。
航空ネットワークの確保は、航空法改正の中でも重要な柱の一つです。
航空ネットワークは、国民の暮らしや経済活動にとって不可欠なインフラです。
コロナ禍や脱炭素化に対応するために、政府や事業者が協力して、航空ネットワークの維持や回復、発展に努めることが求められます。
2.航空保安対策の強化
航空法改正のもう一つの柱は、航空保安対策の強化です。
航空保安対策とは、航空機や空港に対するテロや犯罪などの危害行為を防止するための措置です。
この措置は、航空分野における安全性や信頼性を確保することを目的としています。
航空法改正において、以下のような措置が講じられました。
①保安検査や預入手荷物検査の受検義務付けと保安職員の指示権限の明確化
- 航空機に搭乗する乗客や乗務員は、保安検査を受けることが義務付けられました 。保安検査とは、金属探知器やX線装置などを用いて、身体や手荷物に危険物がないかをチェックすることです。
- 航空機に預ける手荷物は、預入手荷物検査を受けることが義務付けられました 。預入手荷物検査とは、爆発物探知装置やCTスキャナーなどを用いて、手荷物に危険物がないかをチェックすることです。
- 保安検査や預入手荷物検査を行う保安職員は、危険物の発見や疑いがある場合に、乗客や乗務員に対して、身体や手荷物の再検査や開示などの指示を出すことができるようになりました 。これは、保安職員の職務遂行能力を高めるためのものです。
②危害行為防止基本方針の策定と関係者の役割分担と連携強化
- 国土交通大臣は、危害行為防止基本方針を策定し、公表することとなりました 。この方針は、航空分野における危害行為の防止に関する基本的な考え方や目標を示すもので、テロ対策やサイバーセキュリティ対策などが盛り込まれています。
- 危害行為防止基本方針に基づいて、国土交通大臣や航空事業者、空港事業者などの関係者は、それぞれが担当する危害行為防止計画を作成し、実施することとなりました 。これは、関係者間の役割分担と連携を強化するためのものです。
③国土交通大臣の監督権限や運輸安全委員会の調査対象の拡大
- 国土交通大臣は、航空事業者や空港事業者が危害行為防止計画に従って適切な措置を講じているかどうかを監督することができるようになりました 。また、必要があれば、現地調査や資料提出などを求めることができるようになりました 。これは、危害行為防止計画の実効性を確保するためのものです。
- 運輸安全委員会は、航空機に対する危害行為が原因となった事故や重大インシデントについて、調査を行うことができるようになりました 。また、航空機に対する危害行為の未遂や発覚事例についても、必要があれば、調査を行うことができるようになりました 。これは、危害行為の原因や背景を明らかにし、再発防止策を提言するためのものです。
航空保安対策の強化は、航空法改正の中でも重要な柱の一つです。航空保安対策は、航空分野における安全性や信頼性を確保することを目的としています。
3.無人航空機(ドローン)の利活用
航空法改正のもうひとつの柱は、無人航空機(ドローン)の利活用です。
無人航空機とは、人が搭乗しないで遠隔操作や自動操縦で飛行する航空機のことです。
この航空機は、災害救助や物流配送、農業や測量など、さまざまな分野で活用されています。
しかし、無人航空機には、安全性や法的な問題もあります。
そこで、政府は、令和3年と令和4年に閣議決定された航空法の改正において、無人航空機の利活用を促進するとともに、適切な規制を行うために、以下のような措置を講じることとしました。
①機体認証制度と技能証明制度の創設
- 無人航空機の機体について、安全性や性能などを審査し、国土交通大臣から認証を受けることができるようになりました 。これは、無人航空機の品質を確保するためのものです。
- 無人航空機の運用者について、技能や知識などを試験し、国土交通大臣から証明を受けることができるようになりました 。これは、無人航空機の安全な運用を促進するためのものです。
②レベル4飛行(有人地帯上空での補助者なし目視外飛行)の実現と手続きの合理化
- 無人航空機の飛行レベルについて、従来はレベル3(有人地帯上空での補助者あり目視外飛行)までしか認められていませんでしたが、レベル4(有人地帯上空での補助者なし目視外飛行)が可能になりました 。これは、無人航空機の利便性や効率性を高めるためのものです。
- 無人航空機の飛行申請について、従来は国土交通大臣への事前申請が必要でしたが、一定の条件を満たす場合には、事後報告や届出だけで済むようになりました 。これは、無人航空機の飛行手続きを合理化するためのものです。
③事故発生時の報告義務付けと重大事故の調査対象追加
- 無人航空機が事故を起こした場合には、運用者は国土交通大臣にその内容や原因などを報告することが義務付けられました 。これは、事故情報を収集し、再発防止策を講じるためのものです。
- 無人航空機が重大事故(死傷者や財産被害が発生した場合など)を起こした場合には、運輸安全委員会が調査を行うことができるようになりました 。これは、重大事故の原因や背景を明らかにし、再発防止策を提言するためのものです。
無人航空機の利活用は、航空法改正の中でも重要な柱の一つです。無人航空機は、さまざまな分野で活用されていますが、安全性や法的な問題もあります。
4.航空分野全体での脱炭素化の推進
航空法改正の最後の柱は、航空分野全体での脱炭素化の推進です。
脱炭素化とは、温室効果ガスの排出を減らし、気候変動に対応することです。
航空分野は、輸送や観光などに貢献していますが、同時に、二酸化炭素などの排出も多くなっています。
そこで、政府は、令和4年に閣議決定された航空法の改正において、航空分野の脱炭素化を推進するために、以下のような措置を講じることとしました。
①航空脱炭素化推進基本方針の策定と国土交通大臣によるマネジメント
- 国土交通大臣は、航空分野の脱炭素化に関する基本的な考え方や目標を示す航空脱炭素化推進基本方針を策定し、公表することとなりました 。この方針は、国際的な枠組みや国内の目標に沿って、航空分野の脱炭素化に向けた取り組みを促進するものです。
- 国土交通大臣は、航空脱炭素化推進基本方針に基づいて、航空分野の脱炭素化の実現状況や課題などを定期的に評価し、必要があれば方針や措置を見直すことができるようになりました 。これは、国土交通大臣が航空分野の脱炭素化に対するマネジメントを行うためのものです。
②航空運送事業脱炭素化推進計画と空港脱炭素化推進計画の作成と認定
- 航空運送事業者は、自らが実施する航空機の二酸化炭素排出量削減や再生可能エネルギー利用などの取り組みをまとめた航空運送事業脱炭素化推進計画を作成し、国土交通大臣に提出することとなりました 。この計画は、国土交通大臣から認定を受けることで、支援措置の対象となることができます。
- 空港事業者は、自らが実施する空港施設や運営活動における二酸化炭素排出量削減や再生可能エネルギー利用などの取り組みをまとめた空港脱炭素化推進計画を作成し、国土交通大臣に提出することとなりました 。この計画は、国土交通大臣から認定を受けることで、支援措置の対象となることができます。
③空港脱炭素化推進協議会制度の創設と関係者間の協力体制
- 国土交通大臣は、空港事業者や航空運送事業者などの関係者が参加する空港脱炭素化推進協議会を設置することができるようになりました 。この協議会は、空港における脱炭素化の取り組みに関する情報交換や意見交流、協力促進などを行うものです。
- 空港脱炭素化推進協議会の参加者は、空港における脱炭素化の取り組みに関する共通の認識や目標を定めることができるようになりました 。また、必要があれば、国土交通大臣に対して、空港脱炭素化推進計画の認定や支援措置の要望などを行うことができるようになりました 。これは、関係者間の協力体制を構築するためのものです。
航空分野全体での脱炭素化の推進は、航空法改正の中でも重要な柱の一つです。
航空分野は、気候変動に対応するために、二酸化炭素排出量を削減することが求められています。
おわりに
航空法は、時代や社会情勢に合わせて変化していく法律です。
コロナ禍や脱炭素化に対応するために、航空法は大きく改正されました。
これらの改正は、航空分野における安全性や利便性、持続可能性を高めることを目的としています。
航空法の改正内容を理解することで、航空分野に関心を持つことができます。