前回の記事では、ドローンビジネスの魅力と可能性について紹介しました。
ドローンビジネスを始めるためには、ドローンに関する法律や規制を理解する必要があります。
日本では、航空法や地方自治体の条例などがドローン飛行に関するルールを定めています。
また、飛行許可やライセンスなども必要になる場合があります。ドローン飛行には制限区域や注意点もあります。
この記事では、ドローンの法律と規制について詳しく説明します。ドローンビジネスを始める前に知っておくべきことです。
→前回の記事「ドローンビジネスの魅力と可能性 」
1.航空法や地方自治体の規制
ドローンを飛行させるには、法律や規制に従う必要があります。
ここでは、航空法で定められたドローン飛行の基本ルール、地方自治体で定められたドローン飛行の追加ルール、違反した場合の罰則や処分について紹介します。
①航空法で定められたドローン飛行の基本ルール
航空法は、日本国内での航空機の飛行に関する法律です。ドローンも航空機の一種として扱われますが、特に無人航空機として第11章に独自の規定があります。
航空法で定められたドローン飛行の基本ルールは以下のとおりです。
- 飛行許可・承認
- 無人航空機を飛行させる場合には、あらかじめ国土交通大臣(申請先は飛行エリアを管轄する地方航空局・空港事務所)の許可・承認を受ける必要があります。
- ただし、技能証明を受けた者が機体認証を受けた無人航空機を飛行させる場合や、立入管理措置を講じた上で、無人航空機操縦士の技能証明を受けた者が機体認証を受けた無人航空機を飛行させる場合は、許可・承認が不要となる場合があります。
- 飛行許可・承認が必要となる空域や方法は以下のとおりです。
- 空港等の周辺
- 緊急用務空域
- 150m以上の上空
- 人口集中地区の上空
- 夜間
- 目視外
- 人又は物件と距離を確保できない
- 飛行方法
- 無人航空機を飛行させる場合には、以下の方法を遵守する必要があります。
- アルコール又は薬物等の影響下で飛行させないこと
- 飛行前確認を行うこと
- 航空機又は他の無人航空機との衝突を予防するよう飛行させること
- 他人に迷惑を及ぼすような方法で飛行させないこと
- 無人航空機を飛行させる場合には、以下の方法を遵守する必要があります。
②地方自治体で定められたドローン飛行の追加ルール
航空法で定められたドローン飛行の基本ルールに加えて、地方自治体では独自にドローン飛行の追加ルールを定めることができます。
これらの追加ルールは条例や告示などで公表されており、地域や目的によって内容や範囲が異なります。
以下に一部の例を挙げます。
- 東京都:東京都小型無人機等飛行禁止条例により、東京都の施設や公園、オリンピック・パラリンピック会場などの上空でのドローン飛行を禁止しています。また、東京都小型無人機等飛行禁止条例施行規則により、東京都知事の許可を受けた場合に限り、一部の公園でドローン飛行が可能となっています。
- 大阪府:大阪府小型無人機等飛行禁止条例により、大阪府の施設や公園、万博会場などの上空でのドローン飛行を禁止しています。また、大阪府小型無人機等飛行禁止条例施行規則により、大阪府知事の許可を受けた場合に限り、一部の公園でドローン飛行が可能となっています。
- 福岡県:福岡県小型無人機等飛行禁止条例により、福岡県の施設や公園、国際会議やスポーツイベントなどの会場などの上空でのドローン飛行を禁止しています。また、福岡県小型無人機等飛行禁止条例施行規則により、福岡県知事の許可を受けた場合に限り、一部の公園でドローン飛行が可能となっています。
これらの追加ルールは航空法とは別に遵守する必要があります。
また、これら以外にも多くの地方自治体がドローン飛行の追加ルールを定めている可能性があります。ドローンを飛行させる前には、必ずその地域の最新の情報を確認してください。
③違反した場合の罰則や処分
航空法や地方自治体の規制に違反した場合には、罰則や処分が科せられる可能性があります。以下に一部の例を挙げます。
- 航空法
- 飛行許可・承認を受けずに無人航空機を飛行させた場合:6ヶ月以下の懲役又は50万円以下の罰金
- 飛行方法を遵守しなかった場合:30万円以下の罰金
- 航空機又は他の無人航空機と衝突させた場合:3年以下の懲役又は50万円以下の罰金
- 他人に迷惑を及ぼすような方法で飛行させた場合:3年以下の懲役又は50万円以下の罰金
- 地方自治体
- 条例や告示に違反した場合:5万円以下の罰金
- 知事等から指導や命令を受けた場合:従わなかった場合は5万円以下の罰金
2.飛行許可とライセンスの取得プロセス
ここでは、ドローンや無人航空機を飛行させるために必要な飛行許可とライセンスの取得プロセスについて解説します。
ドローンや無人航空機は、空中での事故やトラブルを防ぐために、国や地方自治体の法律や条例に従って適切に管理されています。
そのため、飛行させる場所や方法によっては、事前に許可やライセンスを取得する必要があります
。では、具体的にどのような場合に許可やライセンスが必要なのでしょうか?
そして、どのように申請や取得を行うのでしょうか?それでは、順を追って見ていきましょう。
①飛行許可が必要な場合と申請方法
飛行許可とは、航空法に基づいて国土交通大臣から発行されるもので、特定の空域や方法で無人航空機を飛行させる際に必要です。飛行許可が必要な場合は以下の通りです。
- 空港等周辺区域(空港から約9km以内)を飛行する場合
- 150m以上の高度を飛行する場合
- 催し物等の開催場所の上空を飛行する場合
- 危険物を輸送する場合
- 物件を投下する場合
- 夜間(日没から日の出まで)に飛行する場合
- 目視外で飛行する場合
- 人又は物件から30m以内の距離で飛行する場合
- 最大離陸重量が25kg以上の無人航空機を飛行させる場合
これらの場合には、飛行許可申請書と必要な添付書類を作成し、オンラインサービス「ドローン情報基盤システム<通称:DIPS>」から申請します。
申請書類の内容や形式は、無人航空機のカテゴリー(リスクの高さに応じてⅠ~Ⅲに分類される)や飛行形態によって異なります。
詳細は経済産業省のホームページやDIPSで確認してください。
申請後は経済産業省による審査が行われ、許可または不許可が決定されます。審査期間は約2ヶ月程度ですが、書類内容や審査状況によって異なります。
②ライセンスが必要な場合と取得方法
ライセンスとは、無人航空機操縦者技能証明制度に基づいてJAF(日本自動車連盟)から発行されるもので、特定の方法で無人航空機を飛行させる際に必要です。ライセンスが必要な場合は以下の通りです。
- 目視外で飛行する場合
- 有人地帯(人口集中地区等)で補助者なしで飛行する場合(レベル4飛行)
これらの場合には、ライセンスの種類と概要に応じて、JAFが主催する講習会を受講し、技能試験に合格する必要があります。
講習会の内容や日程はJAFのホームページで確認してください。講習会を受講後は、申請書に申請料を添えて、JAFで手続きをします。手続き後は、ライセンスカードが発行されます。
③許可やライセンスの有効期間や更新方法
飛行許可やライセンスには有効期間があり、更新を行わなければなりません。飛行許可の有効期間は、許可のあった日から起算して5年間です。
ライセンスの有効期間は、発行日から起算して3年間です。有効期間が満了する前に更新を申請しましょう。
飛行許可の更新申請はDIPSから行い、ライセンスの更新申請はJAFから行います。更新申請に必要な書類や料金は、初回申請と同様です。
3.ドローン飛行の制限区域と注意点
ドローンを飛行させるには、法律や規制に従う必要があります。
特に、飛行させる場所によっては、禁止や制限がされている区域があります。ここでは、ドローン飛行の制限区域と注意点について紹介します。
①空港や国会議事堂などの禁止区域
ドローンを飛行させることが絶対にできない区域があります。
これらの区域は、航空機の安全や国家の安全に関わるため、厳しく管理されています。例えば、以下のような場所です。
- 空港やヘリポートなどの周辺空域
- 国会議事堂や官庁などの上空
- 原子力発電所や自衛隊基地などの上空
- 皇居や天皇陵などの上空
- 大規模なイベントやスポーツ競技などの会場の上空
これらの区域では、ドローンを飛行させることは法律で禁止されており、違反した場合には罰金や懲役などの刑事罰が科せられる可能性があります。
また、小型無人機等飛行禁止法により、一部の空港周辺では、空港管理者の同意や都道府県公安委員会への事前通報などが必要となります。
詳細は国土交通省や警察庁のホームページで確認してください。
②人口密集地や公園などの制限区域
ドローンを飛行させることができる場合でも、一定の条件を満たさなければならない区域があります。これらの区域は、人や物件への危害や迷惑を防ぐために制限されています。例えば、以下のような場所です。
- 人口密集地(人又は家屋が密集している地域)の上空
- 公園や学校などの公共施設の上空
- 高速道路や新幹線などの交通施設の上空
- 高圧線や電波塔などの電気・通信施設の付近
これらの区域では、ドローンを飛行させる場合には、以下のような条件を満たす必要があります。
- 国土交通大臣(申請先は飛行エリアを管轄する地方航空局・空港事務所)から飛行許可を受けること
- 無人航空機操縦士(ドローンパイロット)から技能証明を受けること
- 機体認証(ドローン登録)を受けること
- 飛行マニュアル(ドローン操作マニュアル)を作成すること
- 立入管理措置(ドローン飛行区域の管理)を講じること
これらの条件は、飛行させる場所や方法によって異なります。詳細は国土交通省やJAF(日本自動車連盟)のホームページで確認してください。
また、地方自治体によっては、独自にドローン飛行の追加ルールを定めている場合があります。これらのルールも遵守する必要があります。地方自治体のホームページで確認してください。
③夜間や悪天候などの注意事項
ドローンを飛行させることができる区域でも、以下のような場合には注意が必要です。
- 夜間(日没から日の出まで)に飛行させる場合
- 目視外(ドローンパイロットが直接見えない範囲)で飛行させる場合
- 人又は物件から30m以内の距離で飛行させる場合
- 風や雨などの悪天候で飛行させる場合
これらの場合には、ドローンの操作や安全性に影響が出る可能性があります
。特に、夜間や目視外での飛行は、航空法で承認が必要となる方法とされています。
また、人や物件から近い距離での飛行は、落下や衝突の危険が高まります。
悪天候では、ドローンの機能や性能が低下したり、故障したりする恐れがあります。これらの場合には、十分な準備と注意を払って飛行させましょう。
おわりに
ドローンの法律と規制は、ドローンビジネスを始めるために必要不可欠な知識です。
ドローン飛行には、安全や責任を重視することが大切です。
次回の記事では、ドローンビジネスの展望とビジネスモデルについて考察します。
→次回の記事「ドローンビジネスの展望とビジネスモデル 」