業務用エアコンは、店舗やオフィスなどの空調に欠かせない設備です。
しかし、業務用エアコンの室外機は、家庭用とは違って、上吹きと前吹きの2種類があり、設置場所や環境によって適切なものを選ばなければなりません。
また、室外機のみの交換や掃除の方法も、家庭用とは異なります。
この記事では、業務用エアコンの室外機の種類と選び方、交換や掃除のポイントを分かりやすく解説します。
1.業務用エアコンの室外機の種類と特徴
業務用エアコンは、室内機と室外機のセットで構成されており、室外機は冷媒を圧縮・膨張させて熱交換を行う役割を担っています。
室外機の種類や特徴によって、業務用エアコンの性能や設置場所、メンテナンス方法などが異なります。
ここでは、業務用エアコンの室外機の種類と特徴について、詳しく解説します。
①上吹きと前吹きの違いとメリット・デメリット
業務用エアコンの室外機には、大きくわけて、「上吹き」の室外機と「前吹き」の室外機の2種類があります。
「上」と「前」の違いは室外機内部のファンから吹き出る風の向きにあります。
「前吹き」の室外機は、家庭用と同じように横向きにファンがついており、「上吹き」の室外機は、ファンが上空に向かって風を送り出すように取り付けられています。
上吹きと前吹きの室外機のメリットとデメリットは以下の通りです。
種類 | メリット | デメリット |
---|---|---|
上吹き | ・設置場所に制限が少ない ・室外機の音が低減される ・室外機の冷却効率が高い | ・室外機のサイズが大きい ・室外機の重量が重い ・室外機の掃除がしにくい |
前吹き | ・室外機のサイズが小さい ・室外機の重量が軽い ・室外機の掃除がしやすい | ・設置場所に制限が多い ・室外機の音が大きい ・室外機の冷却効率が低い |
②業務用エアコンの室外機の各メーカーの主なラインアップと性能
業務用エアコンの室外機は、各メーカーによって、様々なラインアップや性能があります。
ここでは、日本で主に販売されているメーカーの代表的な業務用エアコンの室外機を紹介します。
三菱重工サーマルシステムズ
三菱重工サーマルシステムズは、業務用空調機の分野で高いシェアを誇るメーカーです。
三菱重工サーマルシステムズの業務用エアコンの室外機は、以下のような特徴があります。
- 1ファン室外機と呼ばれる、小型・軽量・高効率の室外機を展開しています。1ファン室外機は、従来の2ファン室外機に比べて、約30%の省スペース化と約40%の軽量化を実現しています。
- 店舗オフィス用エアコン「AirFlex」シリーズは、風を直接当てずに、部屋全体に心地よい気流をつくる独自の技術を採用しています。AirFlexシリーズは、快適性と省エネ性を両立した業務用エアコンです。
- ガスヒートポンプエアコン「XAIR(エグゼア)Ⅱ」シリーズは、さらなる高効率化を実現した技術です。XAIR(エグゼア)Ⅱシリーズは、電気代の節約やCO2排出量の削減に貢献する業務用エアコンです。
ダイキン工業
ダイキン工業は、空調専門メーカーとして、世界的に高い評価を得ているメーカーです。
ダイキン工業の業務用エアコンの室外機は、以下のような特徴があります。
- 店舗・オフィスエアコン「スカイエア」シリーズは、最新の省エネ・快適技術を搭載した業務用エアコンです。スカイエアシリーズは、室内機の形や種類に合わせて、上吹きや前吹きの室外機を選ぶことができます。
- ビル用マルチエアコン「LX5B」シリーズは、大容量&省スペースを極めた高効率ビル用マルチエアコンです。LX5Bシリーズは、設計自由度が拡大し、様々な個別空調ニーズに応えることができます。
- 独自の空気清浄技術「ストリーマ」が搭載された業務用空気清浄機もラインアップしています。ストリーマは、除菌・脱臭・ウイルス不活化などの効果を発揮し、空気の質を向上させます。
東芝キヤリア
東芝キヤリアは、東芝とキヤリアの合弁会社として、空調機の開発・製造・販売を行っているメーカーです。
東芝キヤリアの業務用エアコンの室外機は、以下のような特徴があります。
- 店舗・オフィス用エアコン「スーパーパワーエコ」シリーズは、高効率・高性能・高信頼性を兼ね備えた業務用エアコンです。スーパーパワーエコシリーズは、上吹きと前吹きの室外機をラインアップしており、設置場所や用途に応じて選ぶことができます。
- ビル用マルチエアコン「SMMS-u」シリーズは、最大64台の室内機を1台の室外機に接続できる高性能ビル用マルチエアコンです。SMMS-uシリーズは、高効率の圧縮機や熱交換器を採用し、省エネ性と快適性を向上させています。
- ガスヒートポンプエアコン「GHP-X」シリーズは、ガスを動力源とする高効率・高信頼性の業務用エアコンです。GHP-Xシリーズは、電力のピークカットや災害時のバックアップなどに有効な業務用エアコンです。
2.業務用エアコンの室外機の選び方
業務用エアコンの室外機を選ぶ際には、設置場所や環境、容量や能力、省エネや節電などの要素を考慮する必要があります。
ここでは、業務用エアコンの室外機の選び方について、詳しく解説します。
①設置場所や環境に合わせた選択
業務用エアコンの室外機は、設置場所や環境に合わせて、最適な種類や形状を選ぶ必要があります。
業務用エアコンの室外機には、前の見出しで説明したように、「上吹き」の室外機と「前吹き」の室外機の2種類があります。
上吹きと前吹きの室外機は、それぞれに適した設置場所や用途があります。
例えば、上吹きの室外機は、屋上や壁面などのスペースが限られた場所に設置するのに適しています。また、上吹きの室外機は、風の流れを妨げないため、冷却効率が高く、省エネにもつながります。
一方、前吹きの室外機は、床置きやベランダなどの広い場所に設置するのに適しています。また、前吹きの室外機は、サイズが小さく、重量が軽いため、設置や移動が容易です。
設置場所や環境に合わせて、上吹きと前吹きの室外機のメリットとデメリットを比較して、最適な選択をすることが重要です。
②容量や能力の見積もり方法
業務用エアコンの室外機は、空調する空間の大きさや形状、使用時間や人数、季節や気温などに応じて、必要な容量や能力を見積もる必要があります。
容量や能力の見積もり方法は、以下のような手順で行います。
- 空調する空間の床面積や天井高さ、窓や壁の面積や方位などを測定します。
- 空調する空間の熱負荷を計算します。熱負荷とは、空調する空間に入ってくる熱量や出ていく熱量のことです。熱負荷は、外気温や日射量、人体や照明などの発熱源、断熱性や通風性などの建物の特性などに影響されます。熱負荷の計算は、専門的な知識やソフトウェアが必要ですが、一般的な目安として、空調する空間の床面積に1平方メートルあたり100W~150Wの熱負荷をかけるという方法があります。
- 空調する空間の熱負荷に対応する室外機の容量や能力を選択します。室外機の容量や能力は、冷房能力や暖房能力、消費電力やCOP(エネルギー効率比)などの指標で表されます。室外機の容量や能力は、各メーカーのカタログやホームページなどで確認することができます。
容量や能力の見積もりは、業務用エアコンの性能やコスト、省エネや快適性などに大きく影響する要素です。
過大に見積もると、初期費用やランニングコストが高くなり、エネルギーの無駄になります。
過小に見積もると、空調効果が低くなり、不快感や不満が生じます。適正な見積もりをすることが重要です。
③省エネや節電の試算ツールの活用
業務用エアコンの室外機は、省エネや節電にも配慮する必要があります。省エネや節電は、電気代の節約やCO2排出量の削減につながります。
省エネや節電の効果を試算するには、以下のようなツールを活用することができます。
- エネルギー消費効率(APF)の比較:エネルギー消費効率(APF)とは、業務用エアコンの省エネ性能を表す指標です。APFは、1年間に消費する電力量に対する冷房・暖房の総効果量の比率で表されます。APFが高いほど、省エネ性能が高いと言えます。APFは、各メーカーのカタログやホームページなどで確認することができます。
- エネルギー消費シミュレーション:エネルギー消費シミュレーションとは、業務用エアコンの実際の使用状況に応じたエネルギー消費量や電気代を予測するツールです。エネルギー消費シミュレーションは、空調設計や運用計画の立案に役立ちます。エネルギー消費シミュレーションは、各メーカーのホームページなどで利用することができます。
- 省エネ診断:省エネ診断とは、業務用エアコンの現状のエネルギー消費状況や省エネの可能性を分析するサービスです。省エネ診断は、専門の技術者が現場を訪問して、エアコンの種類や能力、設定温度や運転時間などを調査し、省エネの提案や見積もりを行います。省エネ診断は、各メーカーのホームページなどで申し込むことができます。
3.業務用エアコンの室外機の交換
業務用エアコンの室外機は、長年の使用や環境の変化によって、故障や劣化が起こる可能性があります。
ここでは、業務用エアコンの室外機の交換について、詳しく解説します。
①室外機のみの交換の可否と注意点
業務用エアコンの室外機が故障や劣化した場合、室外機のみを交換することはできるのでしょうか?答えは、できないということです。
室外機のみの交換は、以下のような理由でおすすめできません。
- 室外機と室内機は、同じメーカー・型式・年式のものでなければ、互換性がない場合があります。室外機と室内機の間には、制御信号や冷媒の流れがありますが、これらが正常にやりとりできないと、エアコンの性能や安全性に影響が出ます。
- 室外機のみの交換は、室内機の寿命を縮める可能性があります。室外機と室内機は、同じ寿命で設計されていますが、室外機のみを新しくすると、室内機に負担がかかります。室内機が故障した場合、再度室外機と室内機のセットで交換する必要があります。
- 室外機のみの交換は、コストパフォーマンスが悪い場合があります。室外機のみの交換は、室外機と室内機のセットで交換するよりも安いと思われがちですが、実際にはそうではありません。室外機のみの交換は、在庫が少なく、入手が困難な場合が多いため、高額になる場合があります。また、室外機のみの交換は、工事や保証の面でも不利になる場合があります。
室外機のみの交換は、上記のような理由でおすすめできません。室外機が故障や劣化した場合は、室外機と室内機のセットで交換することをおすすめします。
②交換時期や費用の目安
業務用エアコンの室外機を交換する際には、交換時期や費用の目安を知っておくことが重要です。交換時期や費用の目安は、以下のようになります。
- 交換時期:業務用エアコンの室外機の寿命は、一般的に10年~15年と言われています。しかし、実際には、使用環境や使用頻度、メンテナンス状況などによって異なります。室外機が故障や劣化の兆候を示した場合は、早めに交換することがおすすめです。室外機の故障や劣化の兆候としては、以下のようなものがあります。
- エアコンの冷暖房効果が低下する
- エアコンの運転音が大きくなる
- エアコンの消費電力が増える
- エアコンの故障やトラブルが頻発する
- 費用の目安:業務用エアコンの室外機の交換費用は、室外機の容量や種類、工事の難易度などによって異なります。一般的な目安としては、以下のようになります。[^5^][5]
- 室外機の容量:1馬力あたり10万円~15万円
- 室外機の種類:上吹きの場合は前吹きよりも高くなる場合がある
- 工事の難易度:屋上や壁面などの高所に設置する場合は、クレーンや足場などの費用がかかる場合がある
業務用エアコンの室外機の交換費用は、複数の業者に見積もりを取ることで、より正確な金額を知ることができます。
また、見積もりを比較することで、よりお得な業者を選ぶことができます。
③リースやクレジットの利用方法
業務用エアコンの室外機を交換する際には、リースやクレジットの利用方法も検討することができます。
リースやクレジットの利用方法は、以下のようになります。
- リース:リースとは、業務用エアコンの室外機を購入するのではなく、一定期間使用する権利を借りることです。リースのメリットは、以下のようなものがあります。
- 初期費用が少ない
- 税金や会計処理が有利
- メンテナンスやアフターサービスが充実
- 最新の機種に更新できる
- クレジット:クレジットとは、業務用エアコンの室外機を分割払いで購入することです。クレジットのメリットは、以下のようなものがあります。
- 一括払いよりも負担が軽減される
- 金利や手数料が低い場合がある
- 資産として所有できる
リースのデメリットは、以下のようなものがあります。
- 総支払額が高くなる場合がある
- 契約期間中は解約や変更ができない場合がある
- 機器の所有権がないため、売却や譲渡ができない
クレジットのデメリットは、以下のようなものがあります。
- 審査に通らない場合がある
- 支払いが滞ると利息が発生する場合がある
- 機器の価値が下がると損失が出る場合がある
リースやクレジットの利用方法は、自社の経営状況や資金繰り、機器の更新頻度などに応じて、慎重に検討する必要があります。
4.業務用エアコンの室外機の掃除
ここでは、業務用エアコンの室外機の掃除について、詳しく解説します。
①掃除の必要性と頻度
業務用エアコンの室外機を掃除する必要性は、以下のようなものがあります。
- エアコンの性能や省エネ効果を維持するため
- エアコンの寿命を延ばすため
- エアコンの故障やトラブルを防ぐため
- エアコンから吹き出す風の清潔さを保つため
- 環境保護や法令遵守のため
室外機は、屋外に設置されているため、雨や風、埃や花粉、虫や鳥の糞などによって汚れやすいです。
汚れた室外機は、熱交換の効率が低下し、エアコンの性能や省エネ効果が低下します。また、汚れが原因で室外機が故障やトラブルを起こす可能性もあります。
室外機の掃除は、エアコンの性能や省エネ効果を維持するだけでなく、エアコンの寿命を延ばし、故障やトラブルを防ぐためにも重要です。
室外機の掃除は、エアコンから吹き出す風の清潔さを保つためにも必要です。
室外機に付着した汚れやカビは、室内機にも移り、エアコンから吹き出す風に混じって室内に拡散します。
これは、室内の空気の質を低下させ、ニオイや健康被害の原因になります。室外機の掃除は、室内の空気の質を高め、快適な空調環境をつくるためにも必要です。
室外機の掃除は、環境保護や法令遵守のためにも必要です。
室外機には、フロンと呼ばれる温室効果ガスが含まれています。フロンは、オゾン層を破壊し、地球温暖化の原因になります。
室外機が故障や劣化した場合、フロンが漏れ出す可能性があります。フロンの漏洩は、環境に悪影響を及ぼすだけでなく、フロン排出抑制法によって罰則の対象になります。
室外機の掃除は、フロンの漏洩を防ぎ、環境にやさしいエアコンの使用を実現するためにも必要です。
室外機の掃除の頻度は、一般的には1~3ヶ月に1回程度と言われています。しかし、実際には、使用環境や使用頻度、メンテナンス状況などによって異なります。
室外機が汚れや劣化の兆候を示した場合は、早めに掃除することがおすすめです。
室外機の汚れや劣化の兆候としては、以下のようなものがあります。
- エアコンの冷暖房効果が低下する
- エアコンの運転音が大きくなる
- エアコンの消費電力が増える
- エアコンの故障やトラブルが頻発する
- エアコンからニオイやカビが発生する
②掃除の方法と注意点
業務用エアコンの室外機を掃除する方法は、以下のようなものがあります。
- 自分で掃除する方法
- 業者に依頼する方法
自分で掃除する方法は、以下のような手順で行います。
- エアコンの電源を切る
- 室外機の周囲のゴミや落ち葉を除去する
- 室外機の表面やファンを掃除機や雑巾で拭く
- 室外機の熱交換器を掃除機やブラシで掃除する
- 汚れがひどい場合は、水や中性洗剤で洗う
自分で掃除する場合は、以下のような注意点に気を付けましょう。
- 電源を切る前に、エアコンの運転を停止させる
- 電気系統に触らない
- 分解しすぎない
- 鋭利なものや強い力でこすらない
- 水をかけすぎない
- 乾いた雑巾で水気を拭き取る
業者に依頼する方法は、以下のようなメリットがあります。
- プロの技術で徹底的に掃除できる
- 機器の内部や高所の掃除もできる
- 点検や修理も同時に行える
- 保証やアフターサービスが受けられる
業者に依頼する場合は、以下のような注意点に気を付けましょう。
- 複数の業者に見積もりを取る
- 業者の評判や実績を確認する
- 契約内容や費用を明確にする
- 作業前後の写真や報告書をもらう
③フロン排出抑制法の遵守
業務用エアコンの室外機を掃除する際には、フロン排出抑制法の遵守も忘れてはなりません。
フロン排出抑制法とは、温室効果ガスであるフロン類の使用や管理を規制する法律です。
業務用エアコンの室外機は、フロン類を冷媒として使用している第一種特定製品として、この法律の対象になります 。
フロン排出抑制法では、業務用エアコンの室外機の所有者や管理者に対して、以下のような義務があります。
- 簡易点検:3ヶ月に1回以上、自ら機器の状態を確認すること
- 定期点検:圧縮機電動機出力が7.5kW以上の機器については、1年または3年に1回、有資格者による点検を受けること
- 漏えいの対処:フロン類の漏えいが見つかった場合、速やかに修理を行い、充填や回収を行わないこと
- 点検記録の保管:機器の点検や修理、冷媒の充填や回収の履歴を、機器の廃棄後も3年間保存すること
- 算定漏えい量の報告:年間で1,000CO2-ton以上のフロン類を漏えいした事業者は、所管大臣に報告すること
- 機器廃棄時のフロン類回収:機器を廃棄する際には、フロン類を回収し、回収依頼書や引取証明書などの書類を交付・保存すること
これらの義務を怠ったり、違反したりすると、罰金や過料、懲役などの罰則が科される可能性があります。
フロン排出抑制法の遵守は、環境保護や法令遵守のためにも重要です。
フロン排出抑制法の遵守に不安がある場合は、専門家に相談することをおすすめします。
ダイキンプロショップなどの空調に精通した業者に依頼すれば、プロの技術で徹底的に掃除や点検を行ってくれます。
また、フロン排出抑制法に関する最新の情報やQ&Aは、環境省のフロン排出抑制法ポータルサイトや日本冷凍空調工業会のフロン排出抑制法パンフレットなどで確認できます。
おわりに
業務用エアコンの室外機は、種類や選び方、交換や掃除について、家庭用とは異なる知識が必要です。
この記事では、業務用エアコンの室外機に関する基本的な情報を紹介しました。
業務用エアコンの室外機を適切に選び、管理することで、快適で省エネな空調環境を実現してください。